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次代を担う若手美術家二人による初の対談
八木良太 × 山城大督 対談 [後半]

2016 07 03

次代を担う若手美術家 八木良太と山城大督。12年来の友人であり、様々な形で関わりつつ、作家として互いに強く意識してきた2人による初の対談を、前後半に分けて掲載する。後半である本記事は、森美術館(東京)にて開催中(2016年7月10日まで)の『六本木クロッシング2016展』に出展している山城の新作『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』についての話が軸となっている。

聞き手:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)
インタビュー撮影:表恒匡

八木良太、山城大督

1. ゆるやかな入れ替え制

――現在開催中の『六本木クロッシング2016展』(※1)に出展している山城さんの新作『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』を観て、八木さんから本人に聞いてみたいことや感想を伺えますか。

(八木)
最近は、映像作品の展示がとても多いけれど、グループ展でわざわざ足を止めて映像作品を観るような人は少ないし、観はじめてから意味を理解するまでに時間がかかることもある。だけど山城くんの今回の作品は、空間的にも時間的にも外部と切断された状況で観ることができる環境が作られていたから、じっくり堪能できました。『六本木クロッシング2016展』の中では、僕はあの展示空間に滞留した時間が一番長かったんです。まずその点がめちゃくちゃよかったと思います。「どれだけ時間をかけて鑑賞者が作品を観てくれるか」に気を配れているかどうかは、一つの戦略としてかなり重要ですよね。「スクリーンの前に椅子が並んでいて、鑑賞者は椅子に座って、スクリーンにプロジェクションされているインタビュー映像を黙々と観る」という展示に出会うと、サービス精神がないと感じる。あと、最初から最後まであの展示空間にいても、物語として理解できる部分は少なかったけど、むしろそういうメッセージの提示の仕方が美術に向いていて心地よかった。「後になってじんわりあの空間で起こった出来事を思い返す」ということが、京都に戻ってからも何回もあるから、いい作品だったんだなって。気になったこととしては「何時何分から上映がはじまる」ということを伝えるために、展示室の入口前に上映開始時間を記した時刻表を貼っていたこと。その方法だと「このタイミングで展示室に行かなかったら作品を観ることができない」という制約があるような印象を与えてしまいますよね。「このタイミングでスタートするので集まってください」という提示の仕方を僕はあまりしない。今回は途中から入室することを許可していなかったよね?

(山城)
許可はしてたんだけど、頭から観ることを推奨していた。展覧会という仕組み上、「何時何分から入ってください」というコントロールはできないじゃないですか。例えばはじまって二分後に入室しようとした人を追い返してしまったら、その人はもうその作品を観に帰ってこない可能性が高い。だからある意味リスクはある。最初はいつでも入室可能なループ構造の展示を考えてたんですよ。でもオープン三週間前に、アサヒ・アートスクエア(※2)で、簡易の照明による展示実験をした時、『六本木クロッシング2016展』キュレーターの荒木夏実さんから「ゆるやかな入れ替え制にして、できるだけ最初から観てもらい、感情移入してもらったほうがいい」という提案を受けて。入れ替え制にすると運営サイドも大変だし、まさかキュレーター側からそのような提案があると思っていませんでした。そういった経緯もあって今回のような形になりました。

『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』 ミクストメディア、インスタレーション 14分
山城のタイムベースド・メディア(※3)作品3部作(※4)の3作目となるインスタレーション。複数のカットを組み合わせて場面を構成する映画のモンタージュ技法の手付きで、実空間の中に時間軸を構成しており、一本の映像作品を鑑賞するように、空間そのものを体験できるようデザインされている。また音響、照明なども同期しており、そういった意味では一部劇場の仕組みを利用していると言える。今回から新たに「デッキ(※5)上に配置されたいくつかの物が喋る」というアイデアが採用されていることも相まって、3作の中では最もストーリー性を感じさせる内容となっている。
『六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声』(森美術館、2016)での展示のドキュメント映像

※1)展覧会情報は本記事最終ページ参照。

※2)東京のスーパードライホール四、五階にかつて存在した、アサヒビール株式会社のメセナ活動の拠点となるアートスペース(2016年3月31日をもって閉館)。山城の代表作である『VIDERE DECK / イデア・デッキ』は本施設のアーティスト支援事業『Grow up!! Artist Project 2013』にて制作・展示された。また2016年3月9日、10日の二日間、同施設で『TALKING LIGHTS / トーキング・ライツ』のプロトタイプ作品の展示実験とブラッシュアップを行った。
アサヒ・アートスクエア http://asahiartsquare.org/ja/home.php

※3)表現に時間軸を伴う作品。

※4)一作目は『VIDERE DECK / イデア・デッキ』(2013)、二作目は『HUMAN EMOTIONS / ヒューマン・エモーションズ』(2015)。

※5)鑑賞者の入場エリアよりも床面を一段上げた台座状の空間。


八木 良太 YAGI Lyota
(美術家)

八木 良太 YAGI Lyota

1980年愛媛県生まれ。京都市在住。見たいものしか見ない・聞きたいことしか聞かないといった、我々の制限的な知覚システムあるいは態度に対する批判的思考をベースに作品制作を行う。既製のシステムや道具を使いながら作品を構成し、その現れによって人間の知覚やそれを利用した工学的システムを浮かび上がらせるような作品を発表している。音響作品をはじめとして、オブジェや映像、インスタレーションからインタラクティブな作品など、表現手法は多岐にわたる。主な個展に『サイエンス/フィクション』(2014、神奈川県民ホールギャラリー[神奈川])、主なグループ展に『phono/graph』(2014、ギンザ・グラフィック・ギャラリー[東京])、『trans×form ─ かたちをこえる』(2013、国際芸術センター青森[青森])がある。

無人島プロダクション
http://www.mujin-to.com/index_j.htm

八木良太 公式サイト
http://www.lyt.jp/


山城 大督 YAMASHIRO Daisuke
(美術家、映像ディレクター)

山城 大督 YAMASHIRO Daisuke

美術家・ドキュメント・コーディネーター。1983年大阪生まれ。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)修了、京都造形芸術大学芸術学部卒業、山口情報芸術センター[YCAM]エデュケーターを経て、東京藝術大学映像研究科博士後期課程。映像の時間概念を空間やプロジェクトへ展開し、その場でしか体験できない《時間》を作品として制作する。2013年には個人として1年間に渡って映像表現を再考する「東京映像芸術実験室」を実施。本企画より誕生した作品『VIDERE DECK/イデア・デッキ』が第18回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品に選出された。2007年よりアーティスト・コレクティブ「Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)」を結成し、他者を介入させ出来事そのものを作品とするプロジェクトを全国各地で発表している。

六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声
http://www.mori.art.museum/contents/
roppongix2016/index.html

山城大督 公式サイト
http://the.yamashirostudio.jp


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