31, Mar 2018

連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ
――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回)
第3回:創造の「スペース」としての《ジン・クラブ》

村上 潔(女性史研究者)

《ジン・クラブ》は、誰もが来ることのできる、月に一度出現するスペース。そこでは、読んだり、おしゃべりしたり、ジンを作ったり、プロジェクトに取り組んだり、新しい技能を修得したり、ジンに関わるあらゆることをする![…]これはドロップ・イン・セッション(ふらっと立ち寄る交流の場)。だから開催時間中いつ来ても大丈夫。(Pen Fight Distro n.d.=2018)

前回(本連載第2回)は、筆者がマンチェスターで参加したワークショップ《メイク・スタッフ[MAKE STUFF](以下、MS)》を紹介することを通して、①ジン・ワークショップの(あるべき)実施形態、②ジン・ワークショップのプロジェクトがコミュニティにおいてもつ役割と意義、③その取り組みが都市空間に自律的文化を浸透させていく可能性、について確認した。

その続きとなる今回は、筆者がマンチェスターで参加したもう一つのワークショップ《ジン・クラブ》を紹介する。そこから、④上記の3点がMSの事例に限って見出される特徴ではないことを確認したうえで、⑤ジンに関する活動の舞台となる空間が自律的な創造と協同を誘発する可能性についてアプローチしてみたい。

前回見たように、本来、ジン・ワークショップは、ジン・カルチャー/DIYカルチャー、そしてクリエイティヴなコミュニティ形成において、大きな役割を果たすものである。それは、日本で一般にイメージされるような「制作技能の伝授・指導」がなされるからではなく、「自発的に創造性を高め合う環境づくり」の実践であるからにほかならない。そこで最終的に目指されるのは、①自律的な空間の創造と、②コミュニティにおける文化基盤の構築、という2点である。その試みの過程は、都市空間に自律的文化を浸透させていくうえで必要不可欠なものだ(※1)。このことを意識したうえで、以下、話を進めていきたい。

※1)前回の9ページを参照されたい。
http://www.ameet.jp/column/1464/#page_tabs=8


村上 潔 MURAKAMI Kiyoshi
村上 潔 MURAKAMI Kiyoshi

1976年、横浜市生まれ。湘南経由、町田市育ち。
2002年から2005年まで、『remix』誌(アウトバーン)に、主に映画・音楽に関する記事を寄稿。その後、『音の力 〈ストリート〉占拠編』(インパクト出版会)、『VOL』誌(以文社)などに寄稿。
2009年、立命館大学大学院先端総合学術研究科一貫制博士課程修了。現在、立命館大学衣笠総合研究機構(生存学研究センター)客員研究員、神戸市外国語大学非常勤講師、立命館大学産業社会学部非常勤講師。専門は、現代女性思想・運動史。
著書に『主婦と労働のもつれ――その争点と運動』(洛北出版、2012年)など。現在の主たる研究テーマは、フェミニスト・アーカイブ活動(Feminist Archive Action)、フェミニスト・ジン・シーン(Feminist Zine Scene)、ジェントリフィケーションと女性コミュニティ(Gentrification and Women's Community)。

著者紹介ページ

村上潔
(arsvi.com:立命館大学生存学研究センター)
http://www.arsvi.com/w/mk02.htm

AMeeT Column

「京都の女性運動と「文化」 第1回(全3回):序論――女のスペース〈シャンバラ〉の活動から」
http://www.ameet.jp/column/column_20140505/

「京都の女性運動と「文化」 第2回(全3回)――〈シャンバラ〉以後、1980年代のリブ運動」
http://www.ameet.jp/column/column_20140708/

「京都の女性運動と「文化」 第3回(全3回)――1990年代、リブとして生き続けることの模索」
http://www.ameet.jp/column/column_20140926/

連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回) 第1回:サルフォード・ジン・ライブラリー
http://www.ameet.jp/column/1380/#page_tabs=0

連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回) 第2回:ワークショップ《メイク・スタッフ》が示す可能性
http://www.ameet.jp/column/1464/#page_tabs=0


2017年12月16日(土)、筆者はマンチェスター・ヴィクトリア駅近くにあるソーシャル・スペース〈パルチザン[Partisan]〉で開催された《Zine Club Manchester - risograph zines w/ Shy Bairns》に参加した【画像1】(※2)。

《ジン・クラブ[Zine Club](以下、ZC)》は、〈ペン・ファイト・ディストロ[Pen Fight Distro](以下、PFD)〉(※3)が主催する、ジンのワークショップだ。第1回(2016年5月28日)から第5回(2017年1月28日)までは、〈サルフォード・ジン・ライブラリー[Salford Zine Library](以下、SZL)〉(本連載第1回参照)主催で、〈マンチェスター・クラフト・アンド・デザイン・センター[Manchester Craft & Design Centre]〉を会場に開催されていた。2017年9月から、PFDが主催となって〈パルチザン〉を会場に月1回のペースで開催している。

《ジン・クラブ》は、誰もがジンを読んだり、作ったり、共同作業をしたり、ジンがどんなものであるか/どう作るものなのかを示してもらったり、既存のプロジェクトに取り組んだり、より熟練したジン制作者に実践的な質問をしたりすることができるスペース。
気軽に来て、のんびり時間を過ごして、私たちとおしゃべりしてね! 閲覧用のジンと制作に使う材料はこちらで提供するけど、使いたいものや寄贈したいジンがあれば何でも自由に持ってきて。
誰でも参加歓迎。《ジン・クラブ》は参加「無料」、だけど寄付は大歓迎。それは材料費を賄うために使われるのと、〈パルチザン〉のための資金集めに回されます。会場では炭酸水と(ヴィーガン向けの)軽食を提供します。

https://penfightdistro.com/zine-club/〔掲載日不明/最終閲覧:2018年3月20日〕)

PFDは以上のようにZCの性格を規定し、参加を呼び呼びかけている(※4)。まず、この取り組みが、MSと同様にDIYカルチャーとしてのジン・カルチャーの本質を忠実に具現化した趣旨のもとに運営されていることは、容易に確認することができる。そして、見逃しがちだが確認しておきたいユニークな点は、ZCが――筆者は上で便宜上「ワークショップ」と記したが――「スペース[space]」だと定義されている点だ。このことの意味については、後段で検討してみたい。

PFDの運営者であるヴィッキー[Vicky Stevenson](※5)は、以前からSZLや《ノースウェスト・ジンフェスト[Northwest Zinefest](以下、NWZF)》(※6)と関わりをもちながら活動してきた。彼女が日常的に管理するPFD公式サイト内の“Resources”カテゴリ(https://penfightdistro.com/resources/)には、「ジン関係資料集[Zine Resources]」・「イギリス国内ジン&DIYイベント・リスト[UK Zine & DIY Events Listings]」・「ジン・コミュニティ掲示板[Zine Community Notice Board]」があり、つねに最新のジン・カルチャーに関する情報全般を入手することができる。彼女は間違いなく現在のマンチェスターのジン・シーンを支える中心人物の一人として位置づけられる。

この回のZCは、〈シャイ・ベアンズ[Shy Bairns](以下、SB)〉(※7)のジョージア[Georgia Gibson](※8)をゲスト・ファシリテーターに迎えて開催されたのだが、PFDのヴィッキーがインフルエンザで欠席というアクシデントがあった。とはいえ現場では混乱した雰囲気など微塵も感じられず、ジョージアも他の参加者(私を含め開始時間にいたのは4人。その後遅れてやってきた人たちをあわせて最終的には延べ12人ほど)も、何事もないように会場入りし、ジョージアは一人で手際よく開始の準備を進めていった。

※2)告知ページが以下(https://www.facebook.com/events/1987631474810978/)。

※3)PFDは自らを以下のように紹介している。
「私たちは〈ペン・ファイト〉。マンチェスターを拠点とする、ジンとDIYアートの小さなディストロ。新しい、手頃な価格の、自主制作出版の創作物を――女性・ノンバイナリー・労働者階級・LGBTQ+・障害者といった人々の作品を優先的に――取り扱っている。私たちの収益はすべて運営資金――ジンフェアでのスペース賃料、在庫の追加発注、イベント運営、図書館への寄贈、その他のナイスなこと――に還元される」
https://penfightdistro.com/about/〔掲載日不明/最終閲覧:2018年3月20日〕)。
*公式サイト:https://penfightdistro.com/

※4)Pen Fight Distro(n.d.=2018)もあわせて参照されたい。

※5)マンチェスターを拠点に活動するアーティスト/イラストレーター/フェミニスト/ジンスタ[Zinester]。
*個人サイト:https://vickylikesdrawing.com/

※6)SZLの共同運営者であるイングリッド[Ingrid Boring]・スティーヴ[Steve Carlton]・リズ[Elizabeth Murray-Jones]・チェリー[Cherry Styles]がチームを組んで主催する、マンチェスターのジンフェスト。これまで2015年5月30日に〈スター・アンド・ガーター[Star and Garter]〉で(https://salfordzinelibrary.co.uk/news/northwest-zinefest/)、2016年6月18日に〈イズリントン・ミル[Islington Mill]〉で(https://salfordzinelibrary.co.uk/news/northwest-zinefest-2016/)開催されている。なお、2016年のポスターのイラストを担当したのは、〈テンダー・ハンズ・プレス[Tender Hands Press]〉運営者のサッファ・カーン[Saffa Khan](本連載第2回参照)である。2017年は開催されなかったが、2018年5月6日に〈パルチザン〉を会場として2年ぶりに開催される(https://www.facebook.com/events/837903243079441/)。
*公式サイト:https://northwestzinefest.wordpress.com/

※7)SBは自らを以下のように紹介している。
「〈シャイ・ベアンズ〉は、DIYアートの出版とワークショップを専門とする、分野横断的なコレクティヴである。私たちは、イングランド北部のアーティスト集団を一つのプラットフォームにまとめあげることを目的とした、セルフタイトルの出版をもって活動を始めた。現在私たちは、別の何ものか――セルフタイトルのシリーズ出版物と並行して、キュレーション、教育、そしてソーシャル・メディア上のことで騒ぎを起こしたりする活動――としても存在している。私たちは、コミュニティ、アイデンティティ、アートの世界のポリティクス、現実世界のポリティクス、そして印刷物はこれらのことすべてとどう関係するのか、について興味がある。まったく不可能な場合を除いて、私たちはたいてい、多色刷りのリソグラフ(簡易印刷機)で印刷をする。その結果、しかたなく目をくるくる回して、素人みたいに印刷することになる。[…]SBは、サンダーランド(イングランドのタインアンドウィア州にある港湾都市)のファンデーション・コース(大学入学準備コース)で出会った、イジー・クロイーズ[Izzy Kroese]、ジョージア・ギブソン[Georgia Gibson]、エリン・ブラマイア[Erin Blamire]、エリナー・ハズウェル[Eleanor Haswell]の4人で構成されている。4人はSBとしての活動のほか、個々人の活動も展開している」
https://www.shybairns.co.uk/info〔掲載日不明/最終閲覧:2018年3月20日〕)。
なお、名称は、イングランド北東部のことわざ“Shy Bairns Get Nowt”(内気な子は何も得られない〔だからもっと大きな声でものを言え〕)からとったものと思われる。
*公式サイト:https://www.shybairns.co.uk/

※8)1995年、サンダーランド生まれ。マンチェスターを拠点に数々のアート・プロジェクトで活動中。
*個人サイト:https://www.georgiagibson.co.uk/

【画像1】告知画像〔画像提供:Pen Fight Distro〕

【画像1】告知画像〔画像提供:Pen Fight Distro〕


前日のMSでのサッファ(本連載第2回参照)とは異なり、この日のZCでジョージアは、いわゆるファシリテーションらしきことはほぼまったく行なわなかった。参加者の自己紹介もなし、ワークショップ自体の解説もなし。ただ、何が用意されているか、何を提出すればどう形(印刷物)になるのか、だけをジョージアは簡単に説明する。ここでその内容を写真を見ながら解説していこう。

まず、会場(〈パルチザン〉の最上階フロア)には作業用の机が一定間隔で置かれている。参加者は好きな席について作業することができる【画像2】。机の上には、①何パターンかの「お題」と一定の大きさの記入枠が印刷された用紙、②作者の自画像を描くための小さな用紙がランダムに置かれている【画像3】(※9)。「お題」の例を挙げると、「何があなたをマンチェスターに連れて来たの?」、「いちばん好きなマンチェスターのスラングは?」、「〈マンチェスター・シティ〉それとも〈マンチェスター・ユナイテッド〉〔のどっちが好き〕?」、「あなたが属するコミュニティを象徴するものを何か描いて」、「『コロネーション・ストリート』(人気連続ドラマ)の登場人物でいちばん好きなのは?」、といったもの。参加者は、書き/描きやすいテーマを選んで、枠のなかに好きなように表現していく。完成したものをジョージアに提出すれば、それをSBのサポート・メンバーがその場でスキャンして、パソコン上でデータをまとめて一冊のコンピレーション・ジンに編集し、それをリソグラフで印刷して製本する、という流れになる。ただ実際には、3時間という開催時間のなかでその行程をすべて行なうのは無理なので、印刷・製本は後日SBが行なう――つまり、参加者はこの場では自分の作品を制作するだけ――ということになっていた。筆者は、異なるテーマで2点制作し、提出した【画像4】。

※9)青い印刷物は、当日〈パルチザン〉の別フロアで開催された音楽イベントのチラシ(ヴィッキーがデザインを担当している)。

画像2

【画像2】

画像3

【画像3】

画像4

【画像4】


この「お題」に答えるのと別に、参加者は自由に自分のジンを作成することができる。そのために必要な、台紙になる色紙、コラージュ素材、はさみ・のり・定規などの道具は、すべて一つの大きなテーブルにまとめて用意されている【画像5・6】(もちろんこれらは上記の「お題」に答える作業でも自由に使用することができる)。参加者はそこから必要なものを選んで確保し(最初は整った状態だった素材の山も、時間が経つにつれ【画像7・8】のようなカオスな!状態になってくる)、自分のテーブルで作業する(※10)。

筆者は上記の2点を仕上げたあと、これらの素材を活用して自分のジンを1点作成した(Murakami 2017)【画像9~12】。

【画像9:p.8(裏表紙)/p.1(表紙)】

【画像9:p.8(裏表紙)/p.1(表紙)】

【画像10:p.2/p.3】

【画像10:p.2/p.3】

【画像11:p.4/p.5】

【画像11:p.4/p.5】

【画像12:p.6/p.7】

【画像12:p.6/p.7】

これは持ち帰ってもよかったのだが、記念としてSBに寄贈した(※11)。

※10)SB公式サイト内の以下のページ(https://www.shybairns.co.uk/workshop-exhib)に、作業風景の写真が掲載されている(“SHY BAIRNS X ZINE CLUB”と見出しがついた箇所)。

※11)後出の【画像15】を見ると、どうやらこちらもリソグラフで印刷してくれたようだ。

画像5

【画像5】

画像6

【画像6】

画像7

【画像7】

画像8

【画像8】


そして別の小さなテーブルには、ジョージアが持参した、①見本となる様々な種類のジンと②ジン・カルチャーに関する書籍が展示され、また③過去にSBが作成したコンピレーション・ジン(Gibson et al. eds. 2017)とジョージアが個人で編集したコンピレーション・ジン(Gibson ed. 2017)が販売されている【画像13】。参加者はいずれも自由に手に取って参照することができ、③はその場でジョージアから購入することができる(※12)。

おやつのことも忘れてはいけない。また別の小さなテーブルには、フルーツやお菓子が何種類か置かれていて(あとから来た人がいろいろ持ってくるので、だんだん増えていく)、気がつくといつの間にか誰かがそれらを見繕って各テーブルに分配してくれていた【画像14】(体に悪そうだけどかわいい!)。

ドリンクは、無料のウォーター・サーバーもあるが、〈パルチザン〉のバー・カウンターにスタッフがいるので、そこで各種ドリンクを注文することができる。その収益は〈パルチザン〉の運営資金となる。

※12)筆者とジョージアは、筆者が日本から持参したジン・各種資料と③とを交換(スワップ)した。そして筆者は帰国後、受け取った③を自らが管理する〈カフェ・パラン・ジン・ライブラリー[Cafe Phalam Zine Library]〉に収蔵した(https://twitter.com/travelinswallow/status/951689799005388800)。それを受けてのSBによる反応(SBのTwitterアカウントはジョージアが管理している)が以下(https://twitter.com/shy_bairns/status/951773924152487936)。

画像13

【画像13】

画像14

【画像14】


ZCは、いうまでもなく途中参加・途中退場は自由なので、遅れてやってきておもむろに制作を始める人もいれば、ただ友だちと喋って帰るだけの人もいる。先述したように開始前の自己紹介タイムなどはないが、同じテーブルについた人たちとは自然と(手を動かしながら)会話が始まる。私が同席した女性2人は、いずれもジン制作経験はなく、でも興味はあったからこれを機会にと思って来てみた、とのことだった。その2人のうち1人のパートナーの男性があとから合流し、同じテーブルに入ったが、おそらくジンについて何も知らない彼は、熱心に制作に取り組む彼女の横で話し相手の役割を果たしていた。このように、誰もがいかなる――がんばって制作しなければ、もしくは、みんなと親しく交流しなければ、といった――圧力も感じることなく、思い思いの時間を自由に、そしてクリエイティヴに過ごすことができる環境――しかも、ごく自然にそうした環境が醸成される――というのは、DIYカルチャーの理念的にはあって当然のことといえるのだが、現実的にはそう簡単に実現できる条件ではない。

これは前日のMSにも共通することだが、ファシリテーターがあれこれ手を尽くして、プログラミングしてこの状況を作っているわけではない。むしろ、①徹底して指示や規制をしない(つまり、ファシリテーションが最低限である)こと、②あくまでそこにいる人、集まった人々の自発的な創造意欲と自律的なコミュニケーションを尊重し、それに場の流れを委ねていることが、この状況の構築を可能にしている。そしてまた、参加者一人一人が、一時的に自律的な創造の場=空間を形成するという意識を、気負うことなく緩く共有していることが、それを下支えしている。この日のZCではその(目には見えない)構造の存在が特に強く感じられた。

その要因としては、ZCの活動の舞台がソーシャル・センターという場、つまり自律的な秩序を共同で構築することが前提となる空間であることも関係しているだろう。批判的地理学の研究者アンドレ・ピュゼーは、ソーシャル・センターやその他の自律空間における実践のなかに「新たな協同主義[New Cooperativism]」なるものが具現化されていることを指摘している(Pusey 2010)。「空間(スペース)」自体の性格が、クリエイティヴな活動の場の自律性・協同性とそれに向かう人々の意識を誘発する。そのような、空間のもつ潜在的可能性について検討してみる必要がありそうだ。そこで、次回(第4回)は、ソーシャル・センター〈パルチザン〉の存在と、そのスペースでジンに関する取り組みが行なわれていることの意味、さらにはその必然性と理論的意義について、詳しく検討してみたいと思う。

いずれにせよ、ZCは、たんなるジン・ワークショップではなく、「一時的に立ち現れる創造と協同のスペース」として位置づける必要がある。それは、PFDがZCを「スペース」と名指す問題意識と、おそらく根底でつながっているはずだ。

筆者にとって、ここで過ごした3時間(15:00~18:00)は、本当にリラックスした、居心地のよい、創造的な時間だった(※13)。それは、「与えられた」居心地のよさではなく、自らがその空間の形成主体であることを意識しつつ味わえた感覚だった。DIYカルチャーのエッセンスを肌で感じた、といえるような。そして大事なのは、それが「ジン」を介してもたらされたということだ。

※13)その日の夜の筆者のツイートが以下(https://twitter.com/travelinswallow/status/942135889173544960)。


以上がこの日のZCに関するレポートとなる(※14)。補足するとSBは、ワークショップでの生み出された成果のアーカイヴィングも行なっている。私たちがこの日制作してSBに提出した成果の数々は、1月初旬に〈パルチザン〉のリソグラフで印刷され【画像15・16】〔画像提供:Shy Bairns〕(※15)、表紙をつけて製本された【画像17】〔画像提供:Shy Bairns〕(※16)。完成したジンはその後、〈マンチェスター・メトロポリタン大学〉のもつアーカイヴである〈スペシャル・コレクションズ[MMU Special Collections]〉(※17)に寄贈された。ここからいつ、どんなフィードバックが発生してくるのか、想像するだけで楽しみだ。

※14)直近に開催されたZCは、3月17日の《Zine Club Manchester: Women's History Month》となる。この回はその名の通り、3月の「女性史月間[Women's History Month]」にちなんだジンを共同制作するという趣旨のもとに行なわれた(https://www.facebook.com/events/824725441058512/)。
今後のPFDの活動としては、4月7日《リヴァプール・アナキスト・ブックフェア[Liverpool Anarchist Bookfair]》、4月14日《マンチェスター・プリントフェア[Manchester Print Fair]》、4月14・15日《グラスゴー・ジンフェスト[Glasgow Zine Fest]》、そして5月6日のNWZFに参加する(ブースを出す)予定である(https://twitter.com/penfight/status/976218935761793024)。

※15)①https://twitter.com/shy_bairns/status/948926797030285315
https://twitter.com/shy_bairns/status/950344679186403329

※16https://twitter.com/shy_bairns/status/950344994380017664

※17)アート・デザインに関係する資料を、教育・研究に活用する目的で収集・収蔵しており、ジンも幅広く/数多く収蔵されている。入場無料で誰でも入ることができる。
*公式サイト:https://mmuspecialcollections.wordpress.com/

画像15

【画像15】

画像16

【画像16】

画像17

【画像17】


参考文献・参照リンク


連載「都市空間と自律的文化へのアプローチ
――マンチェスター・ジン・シーン・レポート」(全4回)
第3回:創造の「スペース」としての《ジン・クラブ》

Category: Column





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