24, Nov 2009
京都大学は1897年の創設以来、多くの教育・研究活動を行ってきた。その過程で生み出される資料の中には、図書や収集された標本類だけでなく、京都大学の伝統であるフィールド研究や海外学術調査で収集された映像、フィールドノート、永年にわたるキャンパスでの教育・研究で紡ぎ出されてきた文字資料や画像、音声などが数多く存在する。こうした資料を体系的に収集・保管するとともに、デジタル化して、教育・研究への活用、市民への公開を積極的に推進することを目的とした取組みが、「京都大学研究資源アーカイブ」である。
映像ステーションでは、京都大学の研究者が撮影し、独自に編集した記録映像など、研究資源アーカイブに所蔵されている研究資源(映像、静止画)をもとに、構成・編集を施した番組などを公開している(2009年11月1日現在、日本語作品14本、英語作品2本、次ページ参照)。それらは施設内に設置されている4台のパソコンで自由に閲覧可能。
その他、1950年代に京都大学の学術探検隊・登山隊が、同行した映画会社とともに収録した記録映画『カラコルム』(1956)、『花嫁の峰 チョゴリザ』(1959)の2作品をスクリーン上映している。いずれも、収録された当時の様子を写す資料価値の高い映像作品であり、現在では映像ステーション内でしか視聴できない貴重な資料である。

作図:京都大学研究資源アーカイブ
研究資源アーカイブの核となるデジタルアーカイブシステムは、学術情報の発信と共有化のためのプラットフォーム(情報基盤)である。このシステムでは、学術情報の蓄積・管理と、資料の再編成や関連情報の付加を行うことができる。また、システム内および外部の学術資料をさまざまなシナリオに応じて関連づけることができる。
デジタルアーカイブシステムは、以下のサブシステムで構成される。

作図:京都大学研究資源アーカイブ

所在地:〒606-8501
京都市下京区吉田下阿達町 京都大学稲盛財団記念館1階
開館時間:10:00-16:00
入館料:無料
休館日:日曜日・月曜日・祝日、京都大学創立記念日(6月18日)、年末年始(12月28日~1月4日)
アクセス:京阪電車「神宮丸太町駅」5番出口徒歩5分 または市バス河原町通「荒神口」下車徒歩5分
※駐車場はございませんので、公共交通機関をご利用ください。
お問い合わせ
京都大学 総合博物館 事務室
Tel. 075-753-3272
Fax. 075-753-3277
E-mail : info(at)inet.museum.kyoto-u.ac.jp



京都大学におけるさまざまな研究活動をテーマに制作された映像番組。
| 番組 No. | 番組名 | 上映時間 |
|---|---|---|
| 001 | アフリカへの道 | 9分29秒 |
| 002 | アフリカ類人猿研究史 | 9分49秒 |
| 003 | 中央アフリカの森の民 | 9分36秒 |
| 004 | アフリカでの古人類学調査 | 7分14秒 |
| 005 | 東アフリカ乾燥地域の牧畜社会 | 7分53秒 |
| 006 | アフリカ農耕民の世界 −ミオンボ林の農耕 | 13分42秒 |
| 007 | アフリカ都市研究の歩み | 07分33秒 |
| 008 | 動きつづける大陸 | 13分09秒 |
| 009 | 道は、ひらける −石井米雄の東南アジア研究 | 13分42秒 |
| 010 | 三角縁神獣鏡 | 10分46秒 |
| 011 | 征夷大将軍 坂上田村麻呂の墓 | 9分03秒 |
京都大学に在籍した研究者、その人物像について迫る映像番組。
| 番組 No. | 番組名 | 上映時間 |
|---|---|---|
| 012 | 無の哲人、禅の思想から日本哲学へ:西田幾多郎 | 11分29秒 |
| 013 | 創造的人間、東洋的思想から理論物理学へ:湯川秀樹 | 13分02秒 |
| 014 | 湯川秀樹 —その人— | 9分30秒 |
現在、映写コーナーでは、戦後初の海外学術探検であった京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊と、京都大学学士山岳会によって成し遂げられたチョゴリザ初登頂をとらえた2編の記録映画を上映している。
(2009年11月1日現在)
※これらの映画作品については、著作権保有者である東宝ステラから上映権を購入して上映。

番組No.001 上映時間:00:09:29 ©京都大学
1958年に、京都大学の今西錦司と伊谷純一郎は人類進化解明の鍵を握るゴリラやチンパンジーの調査地を求めて、はじめてアフリカ大陸を訪れた。それから半世紀に及ぶアフリカ研究の歴史を振り返り、日本における霊長類学、生態人類学、文化人類学、先史人類学、そしてアフリカ地域研究の展開をたどる。

初のアフリカ学術探検でタンザニア・メルー山の登頂を果たした今西錦司
番組No.008 上映時間:00:13:09 ©京都大学
1955年、京都大学カラコラム・ヒンズークシ探検隊に参加した地質学者藤田和夫は、灼熱の峡谷から長大な氷河まで踏査し、地質データを記したルートマップを作成した。藤田は翌年の探検にも参加し、カラコラム・ヒンズークシ地域の境目を探すのだが…。本番組では、フィールドワーカーの探検精神と発想を、モノローグ調の物語を通して追体験する。

峠を越え、正確な地図のない地域へ踏み入っていく京都大学学術探検隊
番組No.010 上映時間:00:10:46 ©京都大学
三角縁神獣鏡は、古墳時代の歴史世界を再構成する際の重要な考古資料であるとともに、その豊かな表現が注目を集め続けてきた。1953年に椿井大塚山古墳から出土した32面以上もの鏡群は、三角縁神獣鏡を代表するものの一つである。現在は京都大学総合博物館に収蔵されている椿井大塚山古墳出土の三角縁神獣鏡の多様な表現と魅力を、鏡のトレースイメージとともに紹介する。

椿井大塚山古墳出土の三角縁神獣鏡(M13号鏡)とトレースイメージ
研究資源アーカイブの理念や研究資料を取り巻く現状、そしてその中での映像ステーションの位置づけと展望などを、施設の運営やコンテンツ作成に携わるスタッフに聞いた。(取材:編集部)
――研究資源アーカイブを始めた動機・契機について教えてください。 (元木)
もともと京都大学はフィールドワークがさかんな大学ですから、研究者がいろいろなところに出かけて行って数多くの発見を行い、論文を遺しています。その論文を書くために、写真や音声、フィールドノートや観測データ、時には映像といった資料が副産物的に数多く生まれます。もちろん研究者本人たちが情熱を持って集めたものではあるのですが、これらは副産物ですから、死蔵されてしまうことが多いのです。フィールドワーク以外でも、実物標本などの画像、実験観測データ、講義などの記録など多種多様な研究資源が存在します。今までそういった資料は、大学の既存の図書館・博物館のような所には体系立てて保管されてきませんでした。
そういった資料を、「研究資源」として改めて捉えていこうというのがこの研究資源アーカイブのそもそもの動機ですね。
映像ステーションでは、そうした資料をもとに、構成・編集をして映像番組を作成し、公開しています。
――映像ステーションの施設が完成したのは2008(平成20)年10月ですが、このような取り組み自体はいつごろから始まったのですか? (元木)
従来から、過去の研究で生まれた資料は研究の「副産物」的なものとして捉えられることが多かったため、そうした資料を正しく保管する仕組みがありませんでした。研究室にあるものもあれば、個人のお宅に保管されているものもあるのですが、そうした資料も近年、毎年のように先生が退職されたり亡くなられていく中で、どんどんと散逸してしまっているのが実情です。
また、運良く資料がしっかりと残っていても、その研究を受け継いだ研究者もずっと京都大学に在職し続けるわけではありません。資料の扱いについても、研究者の直弟子の方であればともかく、孫弟子の世代ともなると、資料がどのような意図のもとに使われていたのか、どういった研究に関係づけられていたかを判断することが難しくなってしまいます。
そうした問題を解決しようと立ち上がったのが、フィールドワークなどを行っていた研究者たちです。研究者の弟子や孫弟子などが所蔵している資料を体系的に保存・管理しようと、2006(平成18)年に当時の尾池和夫総長のイニシアチブで資料の集積がはじまり、いくつかの貴重な資料についてはデジタル化して保管し、各種のシンポジウムなどで公開し始めました。
(山下)
そもそも京都大学の伝統としてフィールドワークへの注力というのが強くあって、実際にフィールドワーク関連の資料は非常に多く、そういった危機感を強く感じていた研究者がこうした活動を行っていたのですが、もちろん大学にはそれ以外の手法での研究も数多く存在しています。
そこで、こうした枠組みをもう少し広く取って、フィールドワーク資料以外の、講義ノートや講演記録、音声なども研究資源として全学的にアーカイブ化しようという決定があったのが2007(平成19)年。これも尾池和夫前総長からの提案と支援があり、そのころから取組みも本格化しました。
研究資源アーカイブの前身は「フィールド映像アーカイブ」という名前で、そこではムービーのアーカイブ化を進めようとしていたんです。つまり始まった当初から映像への注力があったわけですね。
映像ステーションの構想も、フィールドワーク資料の方面から芽生えたアイデアであり、今公開しているコンテンツももフィールドワーク関連映像が半数を占めます。また、戦後初の大規模な学術探検隊の記録映画『カラコルム』と京都大学学士山岳会が実施したチョゴリザ登頂を記録した『花嫁の峰 チョゴリザ』については、映画会社から許諾を得て、映写コーナーで公開しています。
――時期的に見ても、研究資源アーカイブの取組みが始まるのとほぼ同時に、映像ステーションは構想されたということですね。(元木)
全く同時期ですね。むしろ研究資源アーカイブの最初の活動として映像ステーションの立ち上げがあったというべきかもしれません。
京都大学に存在する資料というのは膨大ですから、資料をアーカイブ化するために調べようにも、その全容を把握することがなかなかできません。まずは目に見える形として、こうした映像作品を制作・公開し、研究者に見せることで、例えば「自分のところであればこうした資料がある」と気づいてもらったり、「もっと効率の良いアーカイブの仕方がある」というようなフィードバックを生むことができます。学内から資料を集めるためにも、まずできることからはじめて、学内にもこうした活動を周知させていくことが重要ではないかと思いますね。
――映像ステーションは、学外への公開のための施設であると同時に、学内へ向けた研究資源アーカイブの広報手段でもあるということですね。(山下)
ええ、そうなんです。一般公開も行っていますが、もっと大学の内部へも浸透させたいと思っています。京都大学は規模が大きいので、周知していくのもなかなか大変ですが…
部局や分野を超えた横断的な交流を創出する場になればいいですね。
また学外に対しては、京都大学で行われているさまざまな研究を紹介していきたいと考えています。
(元木)
研究資料は数多くありますが、その中で図書・文献については図書館がありますし、公文書に関しては文書館、標本などの実物に関して博物館があります。それぞれその分野に関しての資料の保管に関しては優れています。しかし、それらがカバーできなかった部分というのも確かにあって、その中でも一般的なものが画像や映像であったのだと思います。
私は大学でコンテンツをつくる研究をしていて、実際に研究資料を元にして新しいコンテンツを作り出し、教育や研究に使ってもらったり、あるいはそういったデザインやコンテンツを作ることで生まれる効果を伝えたり、ということをしています。その中で感じるのは、画像や映像といったメディアには多様な情報を同時に持っていることができるという点において非常に優れているということです。ですから、映像資料を保存・管理していくことは、別の視点から見れば違った見方があり、思わぬ活用されることも期待されます。
また、数多くの資料を構成・編集してある時間内に見せるという意味でも、映像というメディアの持つ利点は意外に大きく、資料を元に映像番組を作成するという映像ステーションでの取組みも研究資源アーカイブ自体へ入って頂くきっかけに非常に効果的なのではないでしょうか。
動画の作成に関しては、もとからフィルムやビデオとして存在する資料以外に、静止画データも付加して足りない箇所を補うなどして動画資料化しています。現在公開されている『無の哲人、禅の思想から日本哲学へ:西田幾多郎』は、大学に残されている動画や静止画に、別の資料として残された西田先生の肉声を足すという編集方法で番組化されています。

大阪芸術大学 芸術計画学科卒業。地域における自然と人間の知恵・技術の関係をテーマにフィールドワークを元にした作品制作やワークショップ、プロジェクト企画を通じてアートとデザインの可能性を探っている。2003年頃より京都大学学術情報メディアセンターコンテンツ作成室にて、学術・教育用コンテンツの作成に取り組み企画・制作ディレクションを担当。現在、京都大学学術情報メディアセンター 助教。2008年度京都大学研究資源アーカイブワーキング・グループ委員として、研究資源アーカイブ、映像ステーションの立ち上げに携わる。

京都大学大学院文学研究科修了(古代ローマ史)。在学中よりフィールドでの写真撮影・写真作品の制作を行い、2006年から京都大学フィールドワークアーカイブプロジェクトに携わる。2007年フィールドワークアーカイブ資料集no.1『1955/1956京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊<地質班>』、フィールドワークものがたり『動き続ける大陸』、2008年、同資料集no.2『人と自然への共感:伊谷純一郎のフィールドワーク』の構成・編集。2008年京都大学研究資源アーカイブ映像ステーション映像番組の制作を担当。京都大学総合博物館学術映像博2009、学術映像コンペティションの企画・運営に携わる。
――今現在で、資料のアーカイブ化というのはどの程度進んでいるのですか? (山下)
そうですね…、まだまだこれからと言ったところです。
現在は比較的古いものから手をつけていて、特に速やかに資料を残さなければならないものやデータが失われる可能性が高いものから取りかかっている最中です。
実際のところ、まだまだデジタル化、アーカイブ化しなければならない資料は本当に山積みですし、乗り越えなければならない問題も数多くあります。
研究資源アーカイブの取組みは本当に始まったばかりですね。そもそもこうしたアーカイブの作業は、大学での研究行為が続く限り、終わりがあるものではありませんから。
――研究資源の「原資料」としての保存、そしてその体系的な管理を行うときに、必ずしも保存・管理とデジタル化は単純なイコールではないと思うのですが、原資料の保存と管理という観点から見たときの、デジタル化の必要性や意義というものをどう捉えていますか? (山下)
このデジタルアーカイブに関する事業には、いろいろな人が関わっています。このデジタル化ということに関して、誰もが同じような思いを持っているわけではないと思うんですよ。
デジタル化にもさまざまな捉え方があって、少なくとも現在の私たちの共通認識では、「デジタル化したところで、資料のもつ全ての要素を残すことはできない」ということです。そういった面からも原資料という「モノ」は大切にしなくてはならない。デジタル化したら、原資料の価値がなくなるなんてことは決してありません。
では、デジタル化することのどこに意義があるのかを考えた場合、原資料に代表されるそうした「モノ」の存在を、広く伝えられることにあると思うんです。研究を始める際などに、資料や博物館の所蔵品を見に行こうと思っても、すぐに見られるわけではありませんし、もちろん手に取ってみることも難しいものが多いですよね。
その点でいつでも、どこでも閲覧することができて、その内容を知ることができるという点で、デジタルアーカイブのメリットがあるのだと思います。映像ステーションの映像番組を見てから、あるいは閲覧したアーカイブのデータをきっかけとして、博物館を訪れるというように。
デジタルデータと保存されている「モノ」との連動が行われたときに、はじめてデジタルデータの意義が生まれるんだと思います。
――ということは映像に限らず、資料デジタル化の取組みは、「活用・利用」という目的を常に意識して続けていかれるということですね。(山下)
はい。
アーカイブ化に際しては、まず資料のデジタル化が可能であり有効であるのかを、原資料の保管とあわせて考えていくことになります。
今まで「モノ」としてしか残せなかったものをデジタル化して残したり、「モノ」にまつわる情報をデジタル化するというのは、非常に意義のあることです。何よりフィルムやテープなど経年劣化してしまったり、破損してしまうものに関してはデジタル化することが適しています。中には、デジタル化を行った後、忍びないけれど破棄せざるを得ない資料などもあります。古いフィルムでビネガーシンドローム(映像・画像を記録したフィルムが時間を経て、酢酸臭を発生させ劣化する現象)が進行してしまっているなど劣化が著しいもの、現在流通していないフォーマットで保存されたテープメディアなどに関しては、早急に手を打たないといけませんね。
――現在、研究資源アーカイブの資料はデータベース、あるいは台帳で管理しているんですか? (元木)
資料に関しては、デジタルアーカイブ管理サブシステムを作成し、辞書データと検索用のメタデータなどを記録していますので、実物との照合はそこで行えます。
――映像ステーションでの映像コンテンツ公開以外で、研究資源アーカイブの他のコンテンツのWeb公開については、どのようにお考えですか?(元木)
できるかぎり様々なデータを公開していきたいと考えています。システムとしては研究資源アーカイブの全てのデジタルデータは、データベースからネットワークを通じて検索・閲覧できるよう設計されていますから、Web上での公開は技術的には実現されています。
しかし、公開にあたっては、その前に乗り越えなくてはならない問題があるので、何が公開できるか、そしてどこまで公開できるかということを見極めなければならない段階です。
理想としては映像ステーション内での公開と、WEB上での公開の両方を行っていきたいと考えています。今後の予定としては、まず学内のLAN上で試験的に公開していこうと思っています。
――公開にあたって障害となることや課題に関して、具体的にお聞かせください。(元木)
どういったデータ形式で公開するかといった技術的な判断と、研究者や制作者の解釈では大丈夫だと思ったけれど、大学側として配信する基準と照らし合わせると不十分だったといった、著作権や肖像権といった権利問題が大きいですね。こういった権利問題に関しては、資料をもとにした映像作品を作る過程でも問題は出てきますが、映像作品の形態や資料ごとにケース・バイ・ケースであることも多いですし、作業を行っていかないと明確に見えてこない点もあるのです。ですから、やはり経験を積みながら、出てきた問題に対して議論を続けていくしかないと思います。
(山下)
問題は山積みですけど、未来に向けて一つひとつ乗り越えていかなくてはなりません。記録データのフォーマットひとつに関しても、乗り越えなければならない課題は多いですね。
――現在、研究資源アーカイブという枠組みの中で、具体的な実務を担当しているのはどこなのでしょうか? (山下)
現状は主に総合博物館と学術情報メディアセンターですね。原資料の保管に関しては博物館にノウハウがありますし、デジタルデータの扱いやコンテンツ作成に関しては、メディアセンターにノウハウがありますから。やはりそれぞれの強みを持って連携することが大事ですね。
しかし、実際は資料が大学のありとあらゆる場所にありますから、その2部局だけではなかなか動きがとれず、色々な教職員の方に協力していただいています。研究資源アーカイブを成功させるためには、そういった個人で賛同していただける先生方の力が最も重要なのかもしれません。
(元木)
デジタル化作業に関しては、私たちが監修して外注に出すほか、研究されておられる先生がご自身で行っていることもあります。保存・管理や公開などが、迅速に行えるなどのメリットが生まれるのですが… 。
京都大学は規模の大きい大学ですから、多様なフォーマットやサイズのデータが存在します。
デジタル化のための連携を行うにはまず、具体的な利活用のケースを想定することが最初の課題になってくるんですけどね。


――映像原資料のデジタル化について、具体的に教えてください。 (山下)
先ほども述べましたが、基本的には、古いものや損失の危険があるものから手をつけています。現在デジタイズを進めているものは、8mm、16mmのフィルムが中心です。これをテレシネしてDVCAMなどのデジタルテープメディアに記録し、デジタルリマスターとしています。
他には、ハイエイトで撮られた資料もあります。ハイエイトは一般的に普及したフォーマットですから、量的にはこちらの方が多くなるのではないでしょうか?
――現在はハイエイトも再生できるデッキが少なくなっていますから、早めの対策が必要になってきますね。 (元木)
ええ、ハイエイトもそうなんですが、残された原資料の中には、、どうやって見たらいいのかと途方に暮れてしまうような古いフォーマットの原資料もたくさん出てきます。こうした雑多なフォーマットの混在を見ると、あらためて資料が埋もれて失われてしまう過程や様子というのが見えてきますね。
比較的一般的なハイエイトであっても、映像ではなくデータを記録しているものが持ち込まれる…ということもありました。京都大学の多くの先生方は昔から、新しいメディアを積極的に取り入れて研究に活用される気風があると思います。こうした大学や教員の気質などが幸いして私たちはメディアの歴史を垣間見ることができ、非常におもしろいのですが(笑)。
――パッと出た新しいメディアに飛びついたら、その後さっぱり使われなくなってしまったり…。 (元木)
そうですね(笑)。
――今ではあまり使われなくなったフォーマットの原資料が持ち込まれるとのことですが、それらを読み込むためのデッキ類はメディアセンターの中でお持ちなのですか? (元木)
元々メディアセンターは1969(昭和44)年に、大型計算機センターとして設立された流れを汲んでいますから、それ以降に販売されていたデッキはある程度、譲り受けたりはしているのですが、とてもそれだけですべてのフォーマットの対応はできませんね。作業量の問題などもあり、現在は外部の企業にデータの読み込みや吸い出しを依頼しているのが実状です。
(山下)
先ほど話していた、ビネガーシンドロームで劣化したフィルムの場合に関してもそうで、学内では手に負えない状態であったものを外部の企業にお願いしました。ただ本当にひどい状態だったらしく、1コマずつスキャンしてもらって、何とかデータとしては作成できたのですが、元のフィルムにはもう戻らない・・・というケースもありました。
本当はNHKや映像制作会社のようにしっかり資料の保管庫を設けられたらいいんですけど…
(元木)
今後、映像ステーションや、研究資源アーカイブを見ていただくことで、研究者間でさらにアーカイブに対する意識が高まってくれればと思っています。また、私たちは研究資料だけでなく、広報関係のビデオ資料も集めています。つい先日、アーカイブに収蔵してよいビデオ資料がどれくらいあるか、アンケートを各部局に対して行ったのですが、ざっと一回だけでも30本くらいのデータが出てきました。普段は皆さん、あまりこうしたアンケートに興味を示されないことが多いので、一回のアンケートで30本も出てくるなら、まだまだ数多くの資料が各部局内に残されていると想定できますね。早くしなければこうした資料も埋もれてしまうでしょう。
デジタル化を含めた動きが推進されて、資料がある程度まとまれば、保管もしやすくなるのではないかと思いますね。
――京都大学内に、そうした原資料を安全に保管する施設というのは存在するのですか? (山下)
現在は原資料の一部を総合博物館の中で保管しています。しかし、紙製のものなどはともかく、フィルムの保管は特にシビアに行わなくてはならないので、それでも十分とはいえませんが。他の収蔵品と同じく、湿度や温度を一定に保った空間の中には置くことはできていますが、これもあくまでも仮の処置です。増え続ける資料を保管する物理的なスペースを確保する必要もあります。
――映像資料のエンコーディングのフォーマットには何を使われていますか?マスターデータとなる高精細・大容量のフォーマットと、公開用のフォーマットとの使い分けなどあれば教えてください。 (山下)
例えば映像ステーションで公開されている映像の場合、マスターデータは非圧縮のDVフォーマット(「.mov」「.avi」)です。DVCAMなどからキャプチャーして編集するときに使う一般的なものとして使用しています。
このマスターデータを元にして、配信の際にWindows Media Video(「.wmv」)とFlash Video(「.flv」)へ変換しています。HD(ハイビジョン)などのフォーマットも、増えてきていますし、もちろん時代によって、特に公開用のフォーマットはどんどん変わっていきますから、私たちも随時対応していかなくてはならないと思っています。
こうした映像のデータは、映像ステーションでの公開のほか、京都大学の別のイベントで上映されるケースもあります。ですので、なるべく汎用性の高いフォーマットを選択して、様々な場面に提供ができるよう心がけています。
――デジタルデータの保管はどのように行っていますか? (山下)
サーバ上とローカルのハードディスク上とで二重に保管しています。ただ、それだけでは不安要素もありますので、もっと安全な方法を取りたいのですが、サーバの容量の問題や冷却装置の問題、設置スペースの確保とそれに伴う費用の問題などをクリアしなくてはなりません。実物資料を保管するスペースだけでなく、デジタルデータという実体のないものでも、そんな問題に悩まされているところです(笑)。
(元木)
また、保管する以前にデータ変換についても、オリジナルがデジタルデータの場合は映像のアスペクト比について、特に気をつけています。従来のテープメディアと違って、微妙に色々な差がある場合が多いのです。制作時の環境や変換の過程で生じたと思われるのですが、手元にある資料についても、実は何らかの複製である可能性もあり、デジタルデータの保管と一口に言っても、デジタル化したデータをおさめておけばよいという単純に機械的作業だけで終わらないことがあるのが悩ましいですね。
(山下)
そういう意味では、デジタルのマスターデータがあったりしても、そのマスターデータの正確さを最終的に確認していくという意味では、原資料の存在というのが重要になってくるのだと思います。複製している間に、知らず知らずのうちにデータ内容が変質してしまうという先ほどの事態も容易に考えられますし。
(元木)
すでにそうした状態でデジタル化されたデータが支給されるケースもあります。配信用に変換しているうちに「画面比率がおかしいぞ」と感じ始めたものの、支給元である部局のホームページではすでに比率が変わっていた状態のままのデータが公開されていたり…なんてこともあります。テープから変換するときに、比率が変わっているのに気付かないといったことなどを防ぐためにも、バージョン管理やマスターデータのバックアップ、さらに原資料の保管は本当に大切ですね。
(山下)
フォーマットの話もそうですが、記録の方法に関しても私たちは考えなければならないと思っています。
記録媒体にも流行り廃りがありますから、暫定的な形であっても常に良いもの、最新の記録媒体へと種をまくようにデータを移し替えていかなければならないのです。万一、原資料が失われてしまった場合、デジタルデータがそれを補完するという事態も予想していかなければならない。
(元木)
そうですね。どんなデジタルデータでも、永久に残るってことはないんです。ただ、データや資料っていうのは使ってこそ価値があるものなので、最低限、長く使用できるような保存・管理方法を考えていかなくてはなりません。少なくとも私たちが生きているうちは、データが残るようにしていきたいと思います(笑)。
そのための研究資源アーカイブですから。
――研究資源を、映像ステーションで公開する映像番組として仕上げる際には、編集要素やナレーション付加などが必要になるかと思います。そういった作業はすべてメディアセンターで行っているのですか? (元木)
ほとんどの過程を、メディアセンターのコンテンツ作成室で行うことができます。制作はすべて研究者との共同で行われ、学内の者同士ですからかなりの打ち合わせを重ねてつくります。資料の数が多いので、すべての番組には携われないですが、主に学内で試行錯誤を重ねて作成した方がよいコンテンツについて、手がけることになっています。現在映像ステーションで公開している『三角縁神獣鏡』などもその例ですね。
『三角縁神獣鏡』に関しては現在もさまざまな説があって、「これ」といった断定的な説が決定されていないそうです。監修された先生のご意向に従って、あえて説明的な要素を排除して制作することにチャレンジしています。具体的には『三角縁神獣鏡』の写真画像を忠実にトレースし表面の文様がわかるように線画にして、映像に反映させたりしています。ただ、映像作品の作り方に関してはまさにケース・バイ・ケースなんですが「形をみなければ、意見も方向性も持ちにくい」という先生もいらっしゃいますね。その際は、あらかじめ重要なことを伺っておいて、企画段階で完成の想像が出来る資料を作成するようにしていますし、編集の途中でも段階段階で確認をとりながら進めています。
――メディアセンター内のスタッフにそれだけの技術があるのですね? (元木)
メディアセンターの、コンテンツ作成室には私以外の映像編集スタッフをはじめ、デザイン担当のスタッフがいますから、企画・構成や撮影・編集に関しては行うことができます。ナレーションに関しては学内のスタジオで収録できるのですが、効果音以外の作曲(BGM)をするのはちょっと難しいので学外の方にお願いしますね。
(山下)
博物館に収蔵されている『三角縁神獣鏡』への関心は高く、閲覧希望も多いのですが、頻繁に展示することはできないので、今後映像作品がその役割を担えればいいと思っています。
また、人類学の分野では、映像制作を論文執筆と同じように重視されている若い研究者も多いので、そういう方はほとんどご自身で編集作業を行われますね。ご自身で編集される方が自分の意図を映像の中に反映しやすいですし、ナレーションに関しても「いかにもプロ」といった語り方よりも研究者の生の声をナレーションにした方が、研究に対する思いが伝わりやすいとおっしゃる方もいらっしゃいます。
映像ステーションの映像番組ははあくまで研究資源をもとにしているので、テレビドキュメンタリーのようなものではなく、常に研究の現場を感じさせる映像として作成・公開したいと思いますね。
――先日、映像ステーションの『中央アフリカの森の民』という作品を拝見したときに、CGで作成した地図が映像内に頻出していましたが、そういったCGなども研究者の方が作られているのですか? (元木)
研究者にとって地図を作ることは、それ自体が研究者としてのスキルにつながるものですから、研究者自身や大学院生などが作っておられることが多いですね。昔は手でグラフを書くように地図を作っていて、論文の資料として付け加えたりしていましたし、特に地域研究の方は、自分で歩いた地域は地図が作られたこともない地域ですので(笑)、当然、一から作らなければならないという事情も多かったようです。
また天文学の研究者なども、いまでは3Dシミュレーションを使っていますが、昔は点の座標軸を書いていってつなぎ合わせ、大変「芸術的」な図表を書いていたそうですよ。
『三角縁神獣鏡』映像内に使われた表面の文様のトレース

コンテンツ作成室 マルチメディアスタジオ
――研究資源アーカイブ、映像ステーションのこれからの予定をお聞かせください。 (元木)
映像ステーションについては、まずはコンテンツを充実させていくことと、著作権をはじめとする問題を解決していくことが必要です。
さらに利用者を増やすことも大切なのですが、映像ステーションの開館時間の問題もあって、学内からでもなかなか見学に来られないという意見も多く挙げられているんです。こうしたことを技術・運用両面から解決するために、まず学内限定でも実験的にコンテンツをWeb上で公開していくことを検討しています。
学内のLAN配信で十分な検証が得られれば、次は外部への配信を考えています。その時は資料をただ探して閲覧できるだけではなく、総合博物館や附属図書館、学術情報リポジトリ(※)などと連動し、もっと有機的に活用できるインターフェースの構築を考えています。
※「京都大学学術情報リポジトリ」は京都大学内で生産された電子的な知的生産物(学術雑誌掲載論文、学位論文、プレプリント、科学研究費報告書、COEプログラム研究成果、講義資料・教材、学会発表資料などの学術情報)を永続的に蓄積し、誰もが無料で読めるようにWeb上で公開するものです。
京都大学学術情報リポジトリ
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/
――今後の研究資源アーカイブ化の計画として、定数的な目標などはあるのでしょうか? (山下)
実は今の段階では、具体的に何件の資料をアーカイブ化する、というような目標は立てていません。 まずは幾つかの資料群をデジタル化しながら事例として蓄積し、全体の様子を把握した上でないと具体的な数字が出てこないのです。一つの資料群をアーカイブ化するのにどのくらい時間がかかるのかということも、理解・把握していかなくてはなりませんね。
(元木)
目標設定を難しくしている原因のひとつは、こうした資料群を均一な作業量で捉える事が出来ないということにあります。それぞれの研究内容や解釈の仕方、映像化するにあたっての方針など、すべての資料に対して研究者の意図を汲み取っていく必要があるのです。アーカイブ化は非常に時間がかかることが予想されますし、外から見れば非常に歯がゆい印象を持たれるかもしれません。しかしそうしたゆっくりとした歩みの中でも頓挫せず、着実に資料のアーカイブ化を進めていくことこそが重要ですね。
時間がかかっても、永続的に進捗していく仕組みを作るのが、私たちの今立てるべき目標です。
――研究資源アーカイブの取組みに関する学内の反応は? (元木)
この取り組みが浸透していないという思いはありますね。まだまだ「知っている人は知っている」というレベルです。ただし、映像資料を持っている先生とお話をさせていただくことも多いのですが、皆さん映像資料の保管や継承、共有に関しては同じような問題意識を持っているんです。しかしそれを研究資料として公開するとなると、中には肖像権の問題や一般には公開できない内容もあったりするのですが、今は公開のレベル設定について要望に応えられるようなものを実装できていないので、まだ様子を見られているという感じはしますね。
それでも積極的に力を貸してくれる方がおられるのも事実で、現在公開中のアフリカのフィールドワーク映像などの制作を行われた先生などもそうです。昨年度の研究資源アーカイブと映像ステーションの立ち上げにはこういった方々が、ワーキンググループとして参加してくださっています。現在こうした試行錯誤の中で見つかった問題点を拾い出していますので、それらをクリアすることができれば、他の研究者の方々へも広くアプローチすることができると思います。
(山下)
学生の皆さんにも、もっとこうした取り組みを知ってほしいと思いますね。こうした学術資料の魅力を感じてほしいし、そこから新しい学びが生まれることにも期待しています。多くの学生の皆さんがここに来てくれるといいですね。
――研究資源のアーカイブ化は欧米などでも行われているのでしょうか?京都大学として参考にしたモデルケースはあったんですか? (元木)
映像や画像のアーカイブに関しては、日本では大学と映画会社などが協力して昔の映画フィルムのアーカイブプロジェクトを行っているという事例がありますね。ある特定の種類の映像を集める、という試みはあると思います。芸術系大学で作品を集めているところもあれば、外国語大学でフィールドワーク映像や資料のアーカイブ化をされている所もあります。各地の自治体やフィルムライブラリーやビデオテークなどでも取り組まれていたりしますね。 ただし、京大のように大学の中で分野とメディアを問わず研究資料を集めてアーカイブ化しようという試みはあまり見られないんじゃないでしょうか。
(山下)
立ち上げのワーキンググループの会議の時に、海外の大学で研究されていた先生から経験を踏まえた意見が出されたことはありましたが、特定のどこかを参考にしたということはなかったと思います。画像とかフィールドノート、映像を全て残してその中のエッセンスを映像で公開しようという一体的な試みは、国内ではおそらくないでしょうね。ミュージアム系でもこうしたことは行っていないようですし。
映像ステーションへ見学に来られた方は、普段なかなか見られない映像が見られたと面白がられることが多いですね。「続きを見てみたい」と言われることも多くなってきています。
(元木)
こんな写真も映像も音声もひとまとめにして、有象無象のままやろうという試みは京大ならではだと思うんですよ(笑)。着地点もまだ定まっていないようなものですし。きれいにこのプロジェクトを着地させるのは非常に難しいと思うんですけど(笑)。でも、このような多様性を保ったままチャレンジしていける懐の広さが、京都大学の気質なんじゃないでしょうかね。
(山下)
京都大学の場合、例えば本来フィールドワークは学際的・横断的な共同研究の手法でもありました。ある人は地域の地質を調査して、ある人は動植物を調査する、またある人は美術だったり、生活習慣を調査するといったように、それぞれの領域の固有の課題は維持したまま、ともに取組んでいくという手法ですね。研究資源アーカイブや映像ステーションもそういった共同研究のきっかけになればよいと思います。
(元木)
京都大学は、「ひとつの総合大学」ではなく、「各部局・各学部が集まって、総合的な大学を作り出している」という認識を持っています。こういったそれぞれの独自性を尊重しつつ、おおらかにやっていければいいですね。
――研究資源を対象としたアーカイブ形成の事例は、あまり聞かないということなんですね。 (元木)
資料の集約・公開という点では、マサチューセッツ工科大学(MIT)が提唱しているOpen Course Wareなどに少し似ているかもしれません。MITの場合は公開前提で、学内の講義はほぼすべて閲覧できるというくらいの規模をもっていますね。京都大学も加わっていますが、コンソーシアムを作ってアジアや欧州とも連携を持ち、その中心にMITがいるという(笑)。しかし研究資料というよりは教育資料ですから、やはり性格が異なると思います。
映像ステーションということでいえば…参考というよりはベースとして考えていたものに、国立民族学博物館(民博)のビデオテークなどがあるのですが、具体的に「ここを参考にした」という訳ではないですね。
全く新しい枠組みをというわけではないんですが、何より敷居を高くしたくないという思いはありました。例えば映像を見るまでの手続きが大変だったりすごく仰々しいところに資料があったり、それではみんなが資料を見にきてくれないと思うんですよ。もっと敷居を低くして、多くの人が使い、ここで「交流」してもらえるような空間を作りたいというのが根底にありますね。
――「交流」というと? (山下)
例えば映像ステーションをゼミの講義室として使用したり、シンポジウムの際にちょっと立ち寄っていただいたり、資料を見ながら感想を交換したりといった使い方をしてもらえればと思います。映像ステーションのモニター前には、必ず椅子が2つあって、さらにヘッドフォンとスピーカーの両方が必ず付いているんです。一見すると両方は必要ないのですが(笑)、これはひとりだけでなく、誰かと一緒に見て、対話を生み出してほしいと思っているからです。
――映像ステーションは、京都大学の関係者だけでなく一般の人々にも開かれていますが、そうした学外の方々、地域の方々へどのように貢献しうると思いますか。 (山下)
映像ステーションにはここでしか見られない映像があるという強みがあります。京大の非常に魅力的な研究資料や、探すことの難しい記録映画が見られるというのは、こうした研究資料に興味を持っている学外の方、地域の人々に対して大きなメリットとなるはずです。
また、こうした資料は研究が実施された地域の人々にとっても重要なものだと思います。研究の過程で残された資料の中には、そこに住んでいる人にとっても今やたどり着けない、過去の貴重な記録が残されていたりもします。研究資源アーカイブは、研究対象とした地域の人々に、研究者の撮影した映像や画像を見てもらう機会を与えてくれるものともいえるでしょう。
こういった試みを続けていくことで、研究対象となる地域の人々に少しは恩返しになるかもしれないし、さらなる協力を得られることにもつながるかもしれません。研究内容やその意義を理解してもらいやすくなると思いますね。
(元木)
もちろん、京都をはじめとする身近な地域の人々にも貢献できると考えています。例えば京都の歴史研究資料であれば、今は失われてしまった京都の古い町並みが記録されていたりもします。伝統の技法や先人の肉声なども、より多くの人に伝えることができるはずです。これから大学を目指す高校生に向けて、京都大学の研究や研究分野そのものに関する興味を喚起することにもつながります。
もちろん、学内外問わず、研究者の方が異分野の資料に触れることで新しい研究や教育の発想の源になればよいなと思いますし、個人的には美術を専攻される方やアーティストの方々も来館されると面白いんじゃないかなと思いますね。
(山下)
映像ステーションでは、映像を見せるだけが公開であるとは思っていませんので、必ず原資料そのものにアクセスできる方法を提供していきたいですね。
スペースとしては公開研究会を開催したり…といったように、ただ単に見て聴いて、というような施設ではないものにしたいと思っているんです。


京都大学研究資源アーカイブ
映像ステーション
Category: Digital Archives