09, Aug 2016

ホテル アンテルーム 京都内に誕生
映像作品鑑賞に特化した“kumagusukuルーム”

「京都のアート&カルチャーの今」を発信するホテル アンテルーム 京都が2016年7月14日、リニューアルオープンした。リニューアルの一環として8つのコンセプトルームが新設されたが、その内の1つであるKYOTO ART HOSTEL kumagusukuが手掛けた“kumagusukuルーム”は、4K対応のTVモニターを導入、長時間の映像鑑賞に最大限配慮しているなど、映像作品鑑賞に特化した空間となっている。本記事では、そのコンセプト、空間、特長などを紹介していく。

文:中本 真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

1. ホテル アンテルーム 京都のリニューアルオープン

「京都のアート&カルチャーの今」を発信するホテル アンテルーム 京都(※1)が、新たなコンセプトと共に67室を増室。2016年7月14日、リニューアルオープンした(※2)。リニューアル後は、「365日アートフェア」をコンセプトに、彫刻家 名和晃平が率いるSANDWICH(※3)のアートディレクションのもと、70組余りのアーティストによる200点以上もの作品が、館内の至るところに展示されている。作品は購入することもでき、展示作品は常に入れ替わるという。

ギャラリーノマルが手がける庭付ツインルーム(展示作品:木村秀樹) 画像提供:ホテル アンテルーム 京都

ギャラリーノマルが手がける庭付ツインルーム(展示作品:木村秀樹) 画像提供:ホテル アンテルーム 京都

金氏徹平によるコンセプトルーム(ツイン)  画像提供:ホテル アンテルーム 京都

金氏徹平によるコンセプトルーム(ツイン) 画像提供:ホテル アンテルーム 京都

中でも新設された8つのコンセプトルームでは、名和晃平、蜷川実花、ヤノベケンジ、金氏徹平、宮永愛子など世界的に活躍するアーティストたちが手掛けた空間が展開されている。その内の1つである、KYOTO ART HOSTEL kumagusuku(※4)が手掛けたコンセプトルーム“kumagusukuルーム”について、そのコンセプト、空間、特長などを紹介していく。

※1)京都駅の南側に位置する専修学校をリノベートして生まれたホテル&アパートメント。2011年オープン。運営はUDS株式会社。館内には、ギャラリー・朝食レストラン・バーを併設し、さまざまな活動を通じて常に変化する「京都のアート&カルチャーの今」を発信している。
http://hotel-anteroom.com/

※2)リニューアルの詳細は以下ページ参照。
http://hotel-anteroom.com/press/

※3)京都市伏見区の宇治川沿いにあるサンドイッチ工場跡をリノベーションすることで生まれた創作のためのプラットフォーム。代表は彫刻家の名和晃平。
http://sandwich-cpca.net/

※4)“アート”と“ホステル”を合わせ、展覧会の中に宿泊し、美術を“体験”として深く味わうための宿泊型アートスペース。2014年四条大宮にオープン。運営は美術家の矢津吉隆。展覧会は、年一回のペースで開催され、その度に全く違う宿泊空間に変貌を遂げる。
http://kumagusuku.info/


2. コンセプト/室内空間

2-1. コンセプト

kumagusukuルームにはKYOTO ART HOSTEL kumagusukuの「展覧会の中に宿泊する」というコンセプトが引き継がれている。そして、数ある展覧会の形式の中でも、kumagusukuルームは映像鑑賞に特化した空間となっている。

kumagusukuルーム(向かって左がエントランススペース、独立壁を挟んで右が映像展示スペース兼ベッドスペース) 画像提供:ホテル アンテルーム 京都

kumagusukuルーム(向かって左がエントランススペース、独立壁を挟んで右が映像展示スペース兼ベッドスペース)
画像提供:ホテル アンテルーム 京都

2-2. 映像展示スペース兼ベッドスペース

入室し、ホテルのデスクスペースを兼ねるエントランススペースから、独立壁を挟んだ先は映像展示スペース兼ベッドスペース。同スペースのベッドは、105cmサイズのシングルベッドを二つ並べた、いわゆるハリウッド仕様となっている。映像鑑賞しやすいよう特注のベッドヘッドとサイドテーブルが設置されており、さらにベッドの上に体を預けることができる大きなクッションが置かれているなど、長時間の映像鑑賞を想定している。美術館やギャラリーでの映像作品展示・上映は、鑑賞の環境という点において最適なコンディションとはいえない場合が多いし、映像鑑賞のために作られた映画館のような空間にて、美術館で展示・上映されるような映像作品が上映される機会は多くない。kumagusukuルームは、長時間の映像鑑賞に最大限配慮しているという点で、映像作品鑑賞にとって貴重な空間であるといえる。なお、映像に没入してもらうため、映像展示スペース兼ベッドスペースから部屋全体を見ると黒い壁面のみが視界に入るように設計されている。

2-3. エントランススペース

前述の通り映像展示スペース兼ベッドスペースから見た壁面は黒に統一されているが、入室してすぐのエントランススペースから部屋全体を見た角度には、ブナ材、モルタルが素材として用いられていたり、ネオンサインが設置されているなどKYOTO ART HOSTEL kumagusukuの意匠が持ち込まれている。これにより映像展示スペース兼ベッドスペース側から見た部屋の印象と、エントランススペース側から見た部屋の印象が異なることも、内装の特長だ。エントランススペースにはkumagusukuとSANDWICH選定による黒にまつわる作品群が展示されており(※5)、同スペースの本棚にはkumagusukuルームのイメージに合わせてYUYBOOKS(※6)が選出した本が並んでいる。

※5)2016年8月9日現在、エントランススペースには石塚源太、小宮太郎、西條茜、ジダーノワ・アリーナ、名和晃平、矢津吉隆 + 林大作、映像展示スペース兼ベッドスペースには前端紗季、宮永亮の作品が展示されている。

※6)京都松原京極商店街にあるいろいろデザイン内の本屋。
http://yuy.jp/


3. 特長

3-1. スペック

TVモニターには4K対応のSHARP AQUOS LC‐60US30、再生機器には安定した再生性能を有したサイネージプレーヤ Brightsign BS/4K242を採用。そしてスピーカーには、㈱ヤマハミュージックジャパンの協賛により、スリムなサウンドバー形状でありながら、ヤマハ独自のバーチャルサラウンド再生技術であるビームスピーカーを搭載し、さらに4K機材との連携にも対応するYAMAHA YSP-1600の導入が実現した。これにより4K(※7)、60インチ、5.1chバーチャルサラウンド再生に対応というハイスペックな環境で映像作品を鑑賞することができる。

ベッド上から見る映像作品 画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

ベッド上から見る映像作品 画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

3-2. ブラック・キューブ

室内の黒い壁面は、光のハウリングが少ないジェットブラックと、オリジナルの漆黒塗料“KUMAGUSUKU BLACK”で仕上げられている。なお、塗料開発には日本有数の絵画材料ブランド ホルベイン工業株式会社が協力している。

3-3. 定期的に入れ替わる上映作品

上映作品は定期的に入れ替わる予定。選定にはkumagusuku だけでなく、SANDWICH、MOVING(※8)も加わる。2016年8月9日現在上映されている映像作品は京都の映像作家 宮永亮(※9)による新作『Matanozoki』。宮永はビデオカメラでとらえた実写映像のレイヤーを、幾重にも重層させる手法を用いて映像作品制作を行っており、本作でもその手法を踏襲しているが、今回は本コンセプトルームでの上映も意識した、展開を抑制した作品となっている。まだ4Kを導入しているアーティストが多くない現状の中、最先端のアーティストの4K作品を常に観ることができるという意味でもまた貴重な場といえるだろう。

映像作品『Matanozoki』(画像はスチル) 2016 ビデオ・アート シングルチャンネル4K UHD ビデオ、音声 16分40秒 © MIYANAGA Akira

映像作品『Matanozoki』(画像はスチル) 2016 ビデオ・アート シングルチャンネル4K UHD ビデオ、音声 16分40秒
© MIYANAGA Akira

※7)作品によって4K画質でない場合もあります。あらかじめご了承ください。

※8)MOVINGは、これまでに2度の映像芸術祭の開催などを通し、主に京都にて、様々な映像表現を紹介している。
http://movingkyoto.jp

※9)1985年北海道生まれ、京都在住。平成23年京都市芸術文化特別奨励者。ビデオ素材のレイヤーを幾重にもスーパーインポーズする手法にて作品制作を行う。主に現代美術の領域でビデオ作品やビデオ・インスタレーション等を発表するほか、VJ活動やMV制作を行う。2015年には、作家事務所兼映像デザインプロダクションとして“ViDeOM”を立ち上げ、コマーシャル領域へも視野を広げる。主なグループ展に『札幌国際芸術祭2014』(2014、札幌市内各所[北海道])、『MOTアニュアル2014』(2014、東京都現代美術館[東京])がある。
http://akiramiyanaga.com/


4. kumagusuku第2号店“kumagusuku B.C”

kumagusukuルームの「映像鑑賞に特化する」という方向性には、京都に作られる予定のkumagusuku第2号店“kumagusuku B.C.”のコンセプトが反映されている(B.C.はブラック・キューブの略)。もともと、KYOTO ART HOSTEL kumagusukuにて開催された展覧会『光の洞窟』(※10)で、客室の窓から風景のように映像を鑑賞できる展示を、矢津自身が宿泊することで体験し、「映像作品がもっている時間の流れ」と「宿泊がもっている時間の流れ」の親和性に可能性を感じたことがkumagusuku B.C.を構想したきっかけだという。その後、現在kumagusukuルームで展示している映像作家の宮永亮(※11)に相談し、本格的にプロジェクトが稼働した。

映像体験、宿泊体験、そしてその両者に新しい関係性をもたらす場として、今後もkumagusukuの試みに期待したい。

KYOTO ART HOSTEL kumagusukuにて開催された展覧会『光の洞窟』では東側のツインルームから中庭壁面に投影された映像を鑑賞することができた。 撮影:大西正一 画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

KYOTO ART HOSTEL kumagusukuにて開催された展覧会『光の洞窟』では
東側のツインルームから中庭壁面に投影された映像を鑑賞することができた。
撮影:大西正一 画像提供:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku

※10)展覧会『光の洞窟』 期間:2014年12月~2015年9月
出品作家:exonemo(アートユニット)、天野祐子(写真家)、Sarah Vanagt(映像作家)、国際科学映像アーカイブ“エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ” 企画:奥脇嵩大(キュレーター)
主催:KYOTO ART HOSTEL kumagusuku 宣伝美術:大西正一
協力:公益財団法人下中記念財団、川瀬慈(映像人類学/国立民族学博物館助教)

※11)宮永はkumagusuku B.C.のディレクターを務める。


中本真生 Nakamoto Masaki
中本真生 Nakamoto Masaki

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。UNGLOBAL STUDIO KYOTO代表。&ART編集長。映像芸術祭MOVINGディレクター。東日本大震災後の南三陸町を舞台にしたドキュメンタリー映画『沖へ』『千葉さん家の夏休み』(監督:村川拓也)プロデュース。

&ART
http://www.andart.jp/

MOVING公式WEBサイト
http://www.movingkyoto.jp/


5. kumagusukuルーム 基礎情報/クレジット

5-1. 基礎情報

室 数: 1室
面 積: 30㎡
定 員: 2名
定 価: ¥18,000~(税込、シーズンにより変動)
ベッドサイズ: W1050×2
テレビサイズ: 60inch

5-2. クレジット

出品作家(映像): 宮永亮
※2016年8月9日現在。
小作品出品: 石塚源太、小宮太郎、西條茜、ジダーノワ・アリーナ、名和晃平、前端紗季、
矢津吉隆 + 林大作
※2016年8月9日現在。
企 画: kumagusuku BC project(矢津吉隆、宮永亮、榊原充大、小野友資)
ブックディレクション: YUYBOOKS
施 工: 株式会社 椎口工務店、池田精堂
協 賛: ㈱ヤマハミュージックジャパン
協 力: ホルベイン工業株式会社

ホテル アンテルーム 京都内に誕生
映像作品鑑賞に特化した“kumagusukuルーム”

Category: Digital Imaging





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