01, Mar 2010

AR(Augmented Reality=拡張現実)を実現する技術

2008年に多くの人が予想していたと思うが、2009年はARの準備期間、2010年は本格的なARの年となった。 既に様々なサービスやアプリケーションが公開されているため、ARとは何かという説明は簡単に済ませたい。ARが適用される分野/用途、それらを実現するための技術を中心に説明する。

執筆:亀山 悦治(Knowledge Works/RIAソリューション事業部 事業部長)

国内におけるAR実用化までの経緯

1998年SONYが小型CCDビデオカメラを内蔵したノートPC VAIO「PCG-C1」を発売した。このPCには、「CyberCode(サイバーコード)」というQRコードとARのマーカーの中間のような、独特の二次元バーコードでプログラムを起動することが出来るソフトが付属していた。この時点ではVAIOのみの利用となっていたため、その広がりを見せることはなかった。もちろん、SONYはこの技術の応用を進めており、ゲーム機のPlayStation、デジタルサイネージでの利用も行われていた。

1999年
「ARToolKit」を奈良先端科学技術大学院大学の加藤博一教授が開発
2005年
「バーチャル飛鳥京プロジェクト」NHKニュースで紹介/東京大学大学院情報学環・池内研究室

そして暫く時間が経過した後、2007年にNHKでアニメ「電脳コイル」が公開され物語の中に登場するアイテム「電脳メガネ」(目に見えない電脳世界が見られるメガネ)が話題となった。この構想がまさしくARであった。これを見逃さなかった一部のソフトウェアエンジニアが実現に向けて取り組んでいたのである。

2008年、「芸者東京エンターテーメント」という会社がAR玩具とも言える電脳フィギュア「ARis」を発売した。独自の拡張現実フレームワーク「GTE_AR_Framework」を開発して実現した。1万円を切る価格で購入出来るパッケージ商品で、PCとWebカメラさえあれば誰でも体験することが出来た。この商品は大きな話題となった。

この前後、動画サイト「ニコニコ動画」で、ボーカロイドのイメージキャラクター「初音ミク」を採用した目を見張るほど高度な表現をしたARのデモ動画が競うようにアップされていた。「こんなことまで出来るとは、まるで神だ!」等、驚きの声が多々コメントされた。今でも少しずつ進化を続けているようだ。

そして2009年、待ちに待った「頓知・」の「セカイカメラ」が一般公開された。iPhone限定ではあるが、無償でダウンロードして誰もが試せるようになった。空間に位置を伴った情報タグを貼付け、その空間の情報をiPhoneで検索出来るようにしたのである。

この時期より幾つものARの技術、ARを利用したアプリケーションやサービスが公開を続けている。


亀山悦治 Etsuji Kameyama
亀山悦治 Etsuji Kameyama

1987年 オフコン系のシステム開発に従事。主に大手商社貴金属部のディーリング管理システムを担当。
1992年 クライアント/サーバ系のシステム開発に従事。主に検査センター・病院・自治体向け検査・健診・福祉関連システムの開発を上流工程から担当。
1999年 Web系システムを行っている会社に移籍後、主にECサイトの開発マネージャを担当。以降、WEB系のシステムを中心に多数のシステムを担当。
2004年より ナレッジワークス(株)にて、システム開発、新規サービスの企画等を担当。現在、RIAソリューション事業部にて、顧客視点に立った新ソリューションの開発、AR実用化のための調査及び啓蒙活動を行っている。趣味は、DTMを中心とした音楽の創作、海外旅行、フィッシング、ダイビング等。



AR実用化の始まり

ARは1999年頃から国内外の技術者が研究開発を進めていたが、なぜ2008年頃までは実用化を目指した表立った動きが無かったのか? 新しい技術に対して日本の多くの大手企業は、すぐに手出しをしない保守的な傾向が有ると感じる。今では当たり前に使われてる、クライアント&サーバ、Web技術、Linuxによる基幹システム、JAVA言語、オープンソースなども、直に手出しをせず、多くの大手企業は慎重にその動向をうかがっていた。ARも同様だったのかもしれない。
その間、ベンチャー企業や個人のエンジニアはARを楽しみながら研究し、新しいサービスの公開を待っていた。

まず、ARが今日のような状態になった契機について、ハードウェアとソフトウェアの2つの視点で考察を行った。

1.技術の革新に伴い高性能なデバイスが安価で利用出来るようになった
WEBカメラ:外付け/高価 ⇒ ノートPC内蔵型の増加/Webカメラ単体でも安価に購入可能
PDA/携帯:殆どの機種にカメラが付いていなかった ⇒ 標準で付いている製品が増加
PDA/携帯:位置情報認識機能が無かった ⇒ 標準で付いている製品が増加
ディスプレイ:高価/精度低い ⇒ 安価/薄型・大型でも精度が高い
HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ):高価/専門分野での利用のみ ⇒ 安価で購入可能な価格
2.ソフトウェアの開発環境が整備された
個人で試せるAR関連の様々なAPIやモジュールが無償で使えるようになった。
ARToolWorksが提供するソフトウェア開発環境が商用でも利用出来るようになった。
海外の様々な企業が公開しているAR開発キット、ARサービスが日本でも利用可能となった。
Android、iPhone向けのAR開発キットやAPIが比較的容易に利用出来るようになった。
ARに関するコミュニティ国内外で多々発足し、様々な情報が得られるようになった。

ARの適用分野/用途

ARの事例として一番多く見受けられるのは商品プロモーションである。それ以外でも既に活用されている多くの事例がある。その概要について説明する。

雑誌

雑誌にマーカーが印刷されて販売される事例が少しずつ見受けられるようになった。その雑誌に関連したWebサイトのAR起動画面でWebカメラを使用しマーカーを表示すると、情報を映像、3D等で表示する。雑誌では得られない情報を提供することが可能となった。

雑誌 COLORS
http://lab.colorsmagazine.com/
雑誌 POPULAR SIENCE
http://ge.ar-live.de/
雑誌広告 Benetton
http://www.benetton.com/portal/web/guest/home
雑誌 Esquire
http://www.esquire.com/the-side/augmented-reality

カタログ/チラシ

自動車、住宅、家具、貴金属、アパレルなどのカタログをWebカメラで表示すると、ARで立体表示する。単に表示するだけでなく、インタラクティブな仕掛けを入れることも出来るため、商品の動きまでも詳細に伝えることが出来る。

自動車 CITROEN C3 Picasso
http://www.c3picasso.com/uk/
フランスの玩具/文具販売サイト「duo」
http://www.duo-shop.de/
オランダの量販店 wehkamp.nl
http://www.wehkamp.nl/winkelen/augmentedreality.aspx?CC=c99

プロモーション

商品、映画、サービス等のプロモーションで使用される。Webカメラやモバイル端末のカメラで表示すると、それに関わる情報を3Dモデルや映像で表示する。最近の事例には、映画ハリーポッターがある。ハリーポッターの地図をサイトから印刷しWebカメラで表示すると、物語に登場する動物や建物が表示される。ナレーションも聞こえてくるため、臨場感もある。

映画「ハリーポッター」
http://www.harrypotter3d.com/
映画「トランスフォーマー」
http://www.weareautobots.com/ww/index.php
映画「スタートレック」
http://www.experience-the-enterprise.com/uk/

グリーティングカード

人と人とのコミュニケーションを紙とデジタルを使用して実現する。デザイン、お祝いの言葉、音楽を選択して登録し、その情報で作成されたARカードを印刷して友人へ郵送する。受け取った友人はWebカメラが付属したPCで表示し、お祝いのメッセージをARで体験することができる。カードだけでは伝えられない熱い想いが伝えられる。

AR Wishes
http://www.arwish.com/
Hallmark(ホールマーク)
http://www.hallmark100years.com/

展示会/イベント

自動車、建築物の展示会やセミナー等のイベントで、ARで商品を展示することが出来る。ARを使用したミュージアムが有名だ。HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を装着した場合、実際にそこに展示物がなくても、まるで存在するかのように見せることが可能である。

デジタルサイネージ

店頭や街角にカメラを内蔵したディスプレイを設置することで、通りかかる人の顔に帽子をかぶせたり、変身させることができる。ユニークな体験を提供することが出来る。また、商品情報を詳しく説明するためのインタラクティブなAR装置が効果的だ。

インタラクティブ電子絵本

本を開くと飛び出す仕掛け絵本が昔から有るが、それと似たようなことをARで実現した。仕掛け絵本はそのうち破れてしまったりするが、ARであれば耐久性が格段に良い。また、特殊なインクやペン等を使用しなくても良いので、コストも抑えられる。絵本の特定の箇所を指で押さえると、絵本の中のキャラクタが話しかけたり動き出したりすなど、様々な効果を作り出すことも可能である。

教育教材

生物、化学、地学、物理、数学など、文字や分かり難い写真を見るよりARが効果的だ。3D表示で、しかもインタラクティブ性がある教材を制作することで、強烈な体験を提供することが可能となる。体験が脳に働きかけ、記憶にも残り易くなるはずだ。また、企業の社員研修などで利用すると効果的だ。

技術習得支援/医療技術

実際に試すことが出来ない技術の習得でも、ARを使用することで効率的に、現実に近い形で習得する事ができる。ARの技術で実現できる形状認識や実際には見えない位置に情報を重ね合わせて表示する技術を使用することで、今までにない支援が行える。

位置情報と関連づけた情報提供

物理的なマーカーは使用せずに位置情報や方角の情報を取得し、現在地の周辺にあるレストランや駅を探し、そこまで誘導してくれるサービス。モバイル端末でARを実現する際に多く用いられる。


ARの2つの基本的な実現方式

ARでは、PC、モバイル端末を使用するケースが殆どだが、インフラから見た場合の方式には大きく分けて二種類ある。一つは、その端末内で全て完結する方式、もう一つは、サーバーへ接続しデーターベースなどの情報を検索後、表示端末へ情報を戻す方式である。
モバイルの場合、サーバー連携による消費電力の消費が激しいため、アプリケーションの特性や利用用途によって使い分けることが必要である。

PC1台でARを実現(キオスク型)

自動車や建造物など、高度な3D表示を扱い場合は、インターネット経由よりインストール型の方が処理が高速に行える。(下記はARSightsの場合)

キオスク型
サーバー側でARを配信(ネットワーク型)

インターネットから不特定多数のユーザーが利用する場合は、サーバー型を使用する。また多くのデータを検索したり処理する場合もサーバーを利用する方式が好ましい。

白黒の四角い形状

ARを実現するマーカーについて

ARで多く利用されているマーカーは、QRコードのような形状をした四角く黒いものが多い。予め印刷して配布するか、ユーザー自身がWEBサイトからPDF等で入手できるよう印刷して使用してもらう形式が多い。マーカーを使用しないでARを実現する方式も存在する。マーカー、マーカーレスという言葉でも異なる意味で使われている場合がある。それらも含めてその種類と概要について説明する。

白黒の四角い形状

多くのARがこの方式を使用しており、「マーカー」と呼ばれていいる。QRコードとの違いを良く質問されるが、QRコードとは用途が大きく異なる。白黒の四角いマーカーをコンピュータが認識する場合の情報は比較的曖昧だ。マーカーの内部の文字に「Hiro」「人」等が例としてある。この中の文字は極端に言えば何でも良い。重要なのは左右非対称であること、外枠と内枠の白と黒が適切な比率になっていることである。マーカーの真上にオブジェクトを表示している事例が多いが、必ずしも上でなくても良い。マーカの或る位置から相対的な場所を設定しておけば、マーカー外側に表示することも可能である。この白黒マーカーを予め配布物に印刷しておかなければならない点については、事前の準備が必要だ。しかし、写真や絵の認識に比べると、情報が単純な分だけ読み取り速度が早い。
ARToolworksのソリューション、AR-Media、metaioの一部のソリューション等で利用されている。

写真や絵

カタログや、パンフレットなどの写真や絵そのものをマーカーにするタイプ。「マーカーレス」と呼ばれることが多いが、後に説明する「形状を自動認識」が完全な意味での「マーカーレス」と呼ばれることもある。既に印刷されている配布物をそのままマーカーにすることが可能であるため、特別な印刷領域が必要なく、自然な形で提供することが出来る。また、写真や絵の特定の位置のみを複数認識されることが出来るため、様々な使用方法が実現出来る。自動車カタログ等で、色を指で押さえると色を変えるという方法はこの応用である。このようにインタラクティブなARを実現させることも容易に実点できる。 Total Immersion、metaio、SREngine などで採用されている。

形状を自動認識

Webカメラで映された様々な変化を情報として読み取り、それをマーカーとして利用する本当の意味で「マーカーレス」いえる方式だ。実世界の中に、特別なマーカーを配置しなくて良い。電脳コイルの世界に近づけるなら、この技術が適切かもしれない。表示されている全ての情報を随時読み取って解析した上で、オブジェクトを重ね合わせるため、自由度が高いARが実現出来る。その分、高度な実装技術が必だ。 金村氏が取り組んだ、街中の建造物をリアルタイム認識するiPhoneのFaLLen/SREngineもこの方式を採用していると思われる。

顔認識

Webカメラがで映しだされた顔の外郭、目、耳の位置等を自動認識し、それらをマーカーとするタイプである。最近のカメラには人の顔を自動認識する製品が増えているが、そのようなイメージと思ってもらいたい。人の顔がモニターに映し出された際、頭の部分に帽子を被せる、メガネをかける、メイクをする等のシミュレーションを行うことが可能となる。

カラー認識

Webカメラで読み取った情報の色を解析し、その色を映しだされた映像の場所に情報を付加して表示することが可能となる。色を取り扱うARアプリ、形状認識が出来ないタイプの開発キットで、形状の代わりに色で対処することでも用途がある。映画東のエデンの「エデンシステム」では、色をマーカーとして使用している。また、iPhoneアプリではWebカラーを調べることが出来るアプリGetColorsARが無料で利用出来る。

位置情報と方角(物理的なマーカーは使用しない)

iPhoneやAndroid携帯等に搭載がされている6軸センサーを使用する方式だ。6軸センサーは3軸の加速度センサーと2軸の地磁気センサー(電子コンパス)を組み合わせたもの。2010年時2月時点では、6軸センサーを組み込んでいる端末は多くないため、利用出来る機種が限られてしまうが、今後は増加していくことが期待できる。この技術は、「セカイカメラ」「Layar」「Wikitude」などで採用されている。

立体物をマーカーとした認識

Webカメラで、オブジェクトを認識させる場合は、マーカーにしたい写真や絵を1枚認識させておけば良いが、立体的な建造物や自動車などであれば、様々な確度から映される場合がある。その場合、今までは対応が出来なかったが、metaio等ではその立体オブジェクトの写真を様々な確度から撮影した画像を予め認識登録させておくことで、立体物そのものをどこから映しても認識されるような仕組みを実現した。まだ具体的な活用事例は見受けられないが、街中やシミュレーションなど様々な場面で使用できそうだ。

単独マーカーと複数認識

マーカーを使用するARに関する補足。1つのマーカーのみを認識するARでは、1つ以上の同一のマーカーをカメラに映した場合、先に検知されたマーカー1つのみが有効となる。2つ以上のマーカーを認識させたい場合は、使用するツールも変わってくるため使い分けることが必要だ。metaioの開発ツールであれば、予め複数マーカーを認識するための機能が備わっている。 複数マーカーを使用する場面としては、対戦型のARカードゲーム等が有る。


ARを実現する技術

一概にARと言っても多くの技術が存在する。 デバイスで大きく二つに分けると、PC用と携帯用だ。それぞれについて代表的な技術とその概要を紹介する。

PCで実現するARの技術

Total Immersion – D’Fusionシリーズ
フランスの企業で、1999年からARに取り組んでいる。Total Immersionはもともと3Dオブジェクトを利用したエンターテイメントの分野から始まっており、映像制作、テレビ局(テレビ番組内)、映画や自動車等のプロモーション、イベントでの利用等の事例が比較的多い。
開発に、D’FusionシリーズのStudio版を使用する場合はWindows環境で行う。3Dオブジェクトは、Autodesk社のMaya等を使用して製作したものを、D’Fusionに取り込んで実装する。
高度なグラフィックを使用することに長けており、白黒の四角いマーカーは使用せず画像や絵などのイメージをマーカーにしている。

特に有名な事例には、下記のものがある。

  • 映画 Avatar(アバター) - MACとのプロモーション、CokeZeroとのプロモーション
  • 映画 Transformer(トランスフォーマーズ) - なりきりAR)、3Dモデルアニメーション
  • フランスのアミューズメント Futureoscope park - Hidden Reality ride - Dark ride attraction
  • シトロエン - Webサイトでの自動車プロモーション
  • グリーティングカードを提供する Hallmarks のプロモーション
  • ATOL社のメガネ試着シミュレーション

metaio - Unifeye
ドイツの企業で、2003年に自動車会社のフォルクス・ワーゲンに所属していたエンジニアが独立して立ち上げた。その関係もあるせいか、工業製品に対する取り扱いが比較的多い。工場の什器配置シミュレーション、家具配置シミュレーション等が比較的目立つ。
Windows PCにインストールし単独のPCで使用するタイプ(キオスク端末=Online type)、IEのプラグイン又はShockwaveを使用してブラウザで動作させるタイプ(Offline type)を用意している。PCにインストールするタイプについてはWindowsXP、Vistaで動作するようになっている。開発はC#等でで実装する。3Dオブジェクトの製作には、例えばAutodesk社の3dMax、Maya等の3D制作ツールを使用する。そのデータを取込んで動作設定のフローを組み込む。
Shockwaveで動作するARを実現する場合、開発はAdobeのDirectorを使用しmetaioが用意するライブラリを組み込む。比較的高度なグラフィックを使用するため、グラフィック性能が高いPCを利用して動作させることが望ましい。
マーカーは白黒の四角のタイプか写真、絵などをマーカーとして利用する形式の2種類が有る。白黒の四角のタイプの方が情報が単純なだけ認識率が高いようだ。

AR-Media - ARSights
GoogleErth上の世界各国の歴史的な建造物の場所に ARSights の「目のマーク」をしたアイコンを配置しており、その建造物の3DオブジェクトをダウンロードしてARを体験することができる。モデルそのものは、Google ScketchUpを使用して作成されているようだ。ARを体験する場合は、予め GoogleEarth と ARSights 実行用アプリケーションをインストールする必要がある。

ARToolworks - ARToolKit
商用ライセンスが利用出来るようになったため、研究者のみならず一般企業でも安心して利用できるようになった(NyARToolKit、FLARToolKitもこのライセンス体系に準拠している)。ライセンス発行を含め、取り扱いはアメリカのARToolWorksが担っている。2009年になり日本でライセンスを取扱う会社が出来たことは記憶に新しい。

ARToolworks - NyARToolKit
NyARToolKitは、ARToolKitをJAVAに移植したものである。日本のA虎氏が実現した。単にC++で実装されたARToolKitをJAVAに移植して利用出来るようにしただけではなく、処理を高速化した。そういう意味では非常に重要な役割を担っている。JAVAであれば基本的にプラットフォームは選ばないため、Windows以外でも動作するようになった。そして、NyARToolKiから次に説明するFLARToolKitが生まれた。

ARToolworks - FLARToolKit
NyARToolKitをFlash(Action Script)に移植したもの。日本のSaqoosha氏が実現した。今までのARとは異なり、ブラウザ内でFlashとして動作させることが出来るようになった。ARが飛躍的に普及するきっかけにもなった。実際にこのFLARToolKitを使用したプロモーションサイトは、2009年頃から多く見受けられるようになった。開発はAdobeのFlash CS3、AdobeのFlex3等で行うことが出来るため、デザイナーにとっても取り扱い易い環境が整備されたことも普及した大きな理由だろう。また、3Dオブジェクトの制作にはフリーで使用出来るPapervision3Dが使われることが多いようだ。 Flashベースでの制作になるため、自動車や建築物などをリアルに表現したい場合には相当な工夫が必要だ。事例について説明すると、GE(General Electric)社の風力発電をテーマにしたARが有名だ。誰でもGEのサイトでARを試すことが出来るようになったため、Youtubeにも多くのデモ動画がアップされた。

FLARManager
ARToolKitは単独のマーカー認識のみであるため、2つ以上のマーカを同時認識させるとしたら容易ではない。この FLARManagerを使用することで、2つ以上のマーカを認識させることが出来るようになる。例えばあるマーカーで表示されている3Dオブジェクトに、もう1つのマーカーを近づけることで異なる動作をさせることが出来る。


モバイルで実現するARの技術

SREngine
SREngineは、画像を認識し情報を付加して表示するタイプ。他のAR技術とは多少傾向が異なり実用的なARを目指してプロジェクトが進められてきた。SREngineには2種類用意されている。

1.iPhone 3Gで動作可能なSREngine Lite
ユーザがアクションを行うことで検索が開始される。QRコードに近いタイプ。
2.iPhone 3GSで動作可能なSREngine
検索はリアルタイムに行われる。より拡張現実ARに近い体験が提供できる。「映画る?」という、ポスターにかざすだけで、あらすじ、評判、予告編鑑賞にアクセスができるサービスを公開している。

SeKai Camera
セカイカメラは、現実空間にエアタグと呼ばれるデジタルなポストイットを貼付けることでコミュニケートするソーシャルARアプリケーション。スマートフォンを「かざす」だけで、「その場所」「その時」に対応した情報をインターネットから取得し、カメラが映し出す現実空間にオーバーレイして表示。またユーザー自身も自ら情報の投稿が可能。

metaio
ARを利用した3Dオブジェクトの表示に特化している。Junaioは、iPhoneを持っていなくてもPCのサイト上でも楽しむサービスも公開している。
Junaio
Unifeye Mobile SDK

Layar
オランダ、アムステルダムのLayarは、Android,iPhone両方のデバイスで利用可能。位置情報と方角を取得し、それに対して文字情報を表示することができる(位置情報を伴った画像やTwitterの情報など)。 最新バージョンでは、3Dモデルとの重ね合わせ表示が出来るようになった。
Samsung Electronics初のAndroid携帯「Galaxy Spica」に、オランダのSPRXMobile社が開発・提供する携帯電話向けAR(Augmented Reality:拡張現実)ブラウザがプリインストールされることとなった。

Wikitude
海外のWikipediaの記事と、その記事に関係ある場所を関連付けて表示する。

Yelp
近くにある駅、ハンバーガーショップ、コーヒーショップなどを探す時に便利なAR。

モバイル3D(日本携帯3キャリア)
日本国内ではスマートフォン以外の携帯電話のユーザーが大多数を占める。デザイン百貨店、電通テックが共同で、携帯電話のオープンプラットフォーム化を見据え、携帯電話3キャリアに対応したAR技術を開発した。広告主の販売促進プロモーション等の活用が可能となる。
1. 携帯電話のキャリアに関係なく、サービスを提供できる
2. ARのコンテンツには様々な情報を付帯させることができる
3. ARのコンテンツからモバイル上の広告主のプロモーションサイトなどへ誘導することができる
<サンプル映像>
URL: http://www.design100.co.jp/mobile/ar/


ARを実現するためのデバイス

今までARが実用化が進まなかった理由としてデバイスの問題も大きかった。ARを実現したくてもVRと同様に高価で一般の人では手に入れることが出来ない機器を使用する必要があった。比較的有名な機器には、大型のHMD(Head Mount Display)、Mirageがある。これはカメラとディスプレイが合体したような役割をし、頭部に装着して使用する。今購入しても約20,000ドルかかるようだ。これでは個人のみならず企業でも使用することを躊躇するだろう。また、この大きさだと長時間使用することは、まず難しいと思う。
(参考情報 Mirage:http://www.vrealities.com/mirage.html )
しかし、この1~2年でこのような問題は解決した。性能は異なるにしても、HMDは1,000ドル以下でで購入出来るようになった。このような面でもARを実現するための環境が整備されたといえる。もちろん機器の問題だけではなくソフトウェアの進化との関係も大きい。

下記は、比較的身近で利用されているデバイスの紹介だ。最初からカメラが装着されているデバイスも有るが、付いていない場合でもWebカメラは既に2千円を切る価格で販売されている。一般の人でも気軽に購入することが出来るようになった。

比較的身近で利用されているデバイス

下記は未来的な形状の「より効果的にARが体験できるデバイス」の紹介。殆どの機種が既に販売されている。拡張現実を身体に装着することが可能となるため、様々な分野での応用が期待できる。

ARが体験できるデバイス

おわりに ―― ARのこれからの課題

今回は、AR(Augmented Reality=拡張現実)に関する技術を中心にまとめた。読んでお分かりいただけると思うが、技術面ではほぼ出揃った感が有る。今まで技術中心で語られがちだったARも「どう作るのか」「何で作るのか」から、「どのように活用出来るのか」、「どのような効果があるのか」という点を考える段階にきている。

単に「ARで実現しました」ということに留まらず、「どのような価値をお客様に提供できるか」、「なぜARが優れているのか」、「費用対効果はどうなのか」等が特に重要となってくる。

私が現在所属しているナレッジワークスでも、利用者のUI/UXを向上させるRIA(Rich Internet Application)のソリューションの一つとして取り組んでいる。ARについても、ソリューションとしてどのようなことが提供出来るかという点に注力し、お客様の価値をよりいっそう高めていきたい。


AR(Augmented Reality=拡張現実)を実現する技術

Category: Digital Imaging





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