06, Oct 2014

財団助成イベント「MOVING Live 0 in Kyoto(京都公演)」レヴュー

映画やプロモーションビデオなど従来的な意味での作品だけでなく、ファインアートとしても独立したポジションを確立しつつある映像表現。そこに音楽を掛け合わせ、ライブパフォーマンスとして提示したらどうなるか。京都・五條會舘で「MOVING Live 0」は、新たな可能性に満ちた冒険であった。気鋭の映像作家とミュージシャン4組が繰り広げた舞台の模様を報告する。

寄稿:小吹隆文(美術ライター) 撮影:井上嘉和

イベント名: MOVING Live 0 in Kyoto(京都公演)
出  演: 柴田剛 + 池永正二[あらかじめ決められた恋人たちへ]、宮永亮 + 志人
山城大督 + swimm、浦崎力 + てあしくちびる ※ミュージシャンとして参加。
日  時: 2014年9月6日(土) 14:30open 15:00start
会  場: 五條會舘(京都市下京区西高瀬川筋五条下る平居町61)
主  催: MOVING 実行委員会
共  催: 京都芸術センター
協  力: みずのき美術館
助  成: 一般財団法人 ニッシャ印刷文化振興財団、公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 三菱UFJ信託地域文化財団
URL: http://moving-kyoto.jp/

2015年2月に開催予定の映像芸術祭「MOVING 2015」。このイベントは、デジタル技術の発達やメディア環境の変化により年々存在感を増している映像表現の現在と、その可能性を提示することがテーマとなっている。過去には、2011年に2度のプレイベントが、続く2012年には第1回が開催され、「MOVING 2015」は第2回に当たる。そして、来たる第2回の約半年前に当たる2014年9月に京都・五條會舘で行われたのが「MOVING Live 0」だ。

「MOVING Live 0」の特徴は、ビジュアル×サウンドをコンセプトとしたライブパフォーマンス・プログラムであることだ。出演者は、映画監督や映像作家などのビジュアルアーティスト4名と、それぞれ異なるジャンルとスタイルで活動するミュージシャン4組。彼らが1組ずつユニットを組み4つの共演を果たすことで、分野を超えたスペシャルなコラボレーションを実現しようというのだ。

公演が行われた9月6日はあいにくの雨だった。会場の五條會舘は築100年前後とも言われる木造の古い建物で、かつては歌舞練場として使用されていた歴史を持つ。舞台には花道があり、左右両サイドには提灯が並ぶ伝統的な日本の劇場スタイルをとどめているが、現在は多目的のイベント会場として用いられ、平時は公開されていない。空調は一応設置されているが、お世辞にも十分とは言えず、当日は蒸し風呂のような悪条件のなかでライブパフォーマンスが繰り広げられることとなった。

sample1

五條會舘 photo by INOUE Yoshikazu


小吹隆文 KOBUKI Takafumi
小吹隆文 KOBUKI Takafumi

美術ライター。約15年間の情報誌編集部勤務を経て、2005年よりフリーランスで活動。主な活動媒体は、京都新聞、Richer、Lmaga.jp、美術手帖、artscapeなど。ブログ「小吹隆文 アートのこぶ〆」(休止中)、ツイッターで自らの発信も行っている。

小吹隆文 アートのこぶ〆
http://blog.livedoor.jp/artkobujime/

twitter公式アカウント
http://twitter.com/#!/kobukitakafumi


井上嘉和 INOUE Yoshikazu
井上嘉和 INOUE Yoshikazu

1976年生まれ。自分の身の回りで鳴る音、表現を定着していくことを目的とした活動を軸に、写真機を使った表現活動を行っている。日本、海外の様々なアーティストから信頼され、アンダーグラウンド、メジャー問わず撮影しているカメラマン。


公演の口火を切ったのは、ミュージックビデオ制作を中心に活動する「浦崎力」と、ボーカル、ギター、バイオリンによるオルタナティブポップデュオ「てあしくちびる」である。てあしくちびるの音楽は独特の抑揚を持つリズムとメロディ、早口で畳み込む字余りの歌詞が特徴で、栃木県足利市を拠点とする彼らの日常や、大都会・東京との距離感などを等身大の目線で綴ったものだ。一方、浦崎力の映像は京都府亀岡市のみずのき絵画教室の生徒たちが描いた絵画を素材にしたアニメーションなどで、演奏とシンクロするかのように自由闊達な動きを見せていた。両者の共演を一言でいえば、それぞれが独立した世界を作りながら影響を与え合うといった所だろうか。

浦崎力 + てあしくちびる photo by INOUE Yoshikazu
浦崎力 + てあしくちびる photo by INOUE Yoshikazu

浦崎力 + てあしくちびる photo by INOUE Yoshikazu


次に登場したのは、美術家で映像ディレクターの「山城大督」と、京都を拠点に活動する「swimm」である。ギター&ボーカル、ギター、チェロ、キーボードの4名から成るswimmの楽曲は、音の隙間や残響を生かしたアンサンブルが基本で、つぶやき、ささやき、時には朗読を経てカタルシスに至る曲調が目立っていた。楽曲が最高潮に達する時の、極度の緊張感を孕んだアンサンブルは彼らならではの魅力と言えるだろう。いわば、演劇性とナルシシズムをたたえた硬質の叙情世界である。そんなswimmに対して山城は、長い棒の先にライトを装着した照明器具を舞台にかざして美しい影を作る、演奏中の舞台にオブジェを置く、シャンボン玉発生装置を用いるなどの行為を行った。もちろん映像も用意されており、雪が舞うような情景、半透明の擦りガラスもしくは樹脂版に泡を垂らした映像が用いられていたが、あくまでも音楽の演出に徹していたように感じられた。なお、彼らの公演中に劇場の窓を開けて外光を入れる場面があったが、これが最初から狙った演出なのか、あまりの蒸し暑さゆえの緊急避難的処置だったのかは定かではない。

山城大督 + swimm photo by INOUE Yoshikazu
山城大督 + swimm photo by INOUE Yoshikazu

山城大督 + swimm photo by INOUE Yoshikazu


3組目は、ビデオアートやインスタレーションなど美術フィールドでの活動で知られる「宮永亮」と、ソロの他、降神、TriuneGodsなどとしても活動する「志人」が登場。彼らは、お互いの世界のぶつかり合いからマジカルな一瞬を発生させる方法論を選択した。具体的にいうと、宮永は、森の中から見上げた空、飛行機から見下ろした雲、草むら、水辺、激しく波打つ水面、夜の高速道路、火花、天と線の乱舞などの映像を単体もしくは重ねて上映し、空間的広がりのある世界を映し出した。一方、志人は文章を朗読するような歌唱スタイルで、その内容は、韻にこだわったもの、物語的なもの、メッセージ色の強いものなどバラエティーに富んでいる。時折エコーを強調し、声が二重になる部分もあったが、そうしたエフェクトも全て本人が舞台上でコントロールしているようだ。早口で淀みなく綴られる言葉は、ラップというよりも経文や声明を聞く感覚に近い。また、彼の楽曲は1曲の演奏時間が非常に長く、しかも途切れなく進んで行くため、観客は徐々に軽いトランス状態に導かれて行く。その時、宮永の空間的広がりを感じさせる映像は非常に効果的で、一気に巨視的な世界に持って行かれるのであった。2人の共演は大変濃密で、心地よい疲労を伴うものであった。

宮永亮 + 志人 photo by INOUE Yoshikazu
宮永亮 + 志人 photo by INOUE Yoshikazu

宮永亮 + 志人 photo by INOUE Yoshikazu


最後に登場したのは、映画「おそいひと」「堀川中立売」やミュージックビデオの監督として活動する「柴田剛」と、叙情派インストダブユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ(あら恋)」のフロントマンである「池永正二」だった。柴田はあら恋のミュージックビデオを監督したことがあり、今回はその映像と未使用部分に加え、新たな撮り下ろしも加えて再構成した映像を用意した。それに対して池永は、キーボードや鍵盤ハーモニカの生演奏で映像と真っ向勝負を挑み、楽曲とミュージックビデオのリクリエーションともいうべき共演を果たした。映像は、京都の市街地でのクレーン撮影から始まり、母子の幸福な時間、都会の夜景から早朝の情景、男女(恋人たち?)を主人公にした物語へと移り変わる。音楽もアップテンポから和音の持続、再びアップテンポへと変化し、最後はかけがえのない記憶を慈しむような余情を持って大団円を迎えたのであった。

このように、出演した4組がそれぞれ異なる世界観を作り出し、映像と音楽の新たな関係性・可能性を提示し得たのが「MOVING LIVE 0」の成果であった。強烈な蒸し暑さの中、3時間超にわたる長丁場のイベントとなったが、このレアな機会を体験できたのは本当にラッキーだったと思う。彼らは10月19日に千葉県柏市のキネマ旬報シアターで再共演を果たす。それぞれが京都公演の経験を生かし、さらなる高みへ至ることを期待している。

柴田剛 + 池永正二[あらかじめ決められた恋人たちへ] photo by INOUE Yoshikazu
柴田剛 + 池永正二[あらかじめ決められた恋人たちへ] photo by INOUE Yoshikazu

柴田剛 + 池永正二[あらかじめ決められた恋人たちへ] photo by INOUE Yoshikazu


MOVING Live 0 in Kashiwa(柏公演)

それぞれのフィールドで無二の存在感を放つ映像作家とミュージシャンが、
分野を越えてコラボレーションする“MOVING Live 0”

“MOVING Live 0”はヴィジュアル×サウンドをコンセプトとしたライブパフォーマンス・プログラム。映画『おそいひと』『堀川中立売』などを監督し、『Back』『Fly』など、あら恋のMVを手掛けてきた映画監督の柴田剛とコラボレーションするのは、あら恋のフロントマン池永正二。旧知の仲であり、今やそれぞれのシーンを代表する存在となった2人による、満を持してのライブ初共演(今回のための撮り下ろし映像もあり)。主に美術分野において近年目覚しい活躍を見せる映像作家 宮永亮と、ソロの他、降神、TriuneGodsなどとしても活動する、孤高の表現者志人による初コラボレーションも必見。時に敬虔さすら感じさせる詩と音楽に、イメージを幾重にも重層することで、どのようなナラティブ(物語)が立ち上がるのか。音楽ユニットswimmとコラボレーションする山城大督は、ライブ形式でのパフォーマンス自体が初。映像というメディアそのものを批評するような作風で注目を集める彼らしく、コラボレーションのフォーマットからアイデアを膨らませる予定。日本語ラップ表現の異端てあしくちびるは、今回の京都公演が関西初ライブとなる。弦楽器と言葉のみで生み出される彼らの音楽に映像で生命を与えるのは、『てあしくちびる/ペリ』をはじめ、MV制作を中心に活動する気鋭の映像作家 浦崎力。なお、会場は映画館というレアなロケーション。映像、音楽、芸術に興味がある方から、現代における映像表現の動向に注目している方まで、二度と見られないスペシャル・プログラムをお見逃しなく。

出  演 柴田剛 + 池永正二[あらかじめ決められた恋人たちへ]、宮永亮 + 志人
山城大督 + swimm、浦崎力 + てあしくちびる
※ミュージシャンとして参加。
日  時 2014年10月19日(日) 18:00open 18:30start
会  場 キネマ旬報シアター(千葉県柏市末広町1-1)
通常料金 前売 3,300 円/当日 3,800円
学  割 学生の方は500円OFFでご入場いただけます。
※ 学割をご利用になる場合は、予約時に学生であることをお伝えいただき、当日は学生証をご持参ください。
※ 学割がご本人様のみの適用となります。
ご予約 イベント名(京都公演か柏公演かを必ず明記してください)、氏名、電話番号、 参加人数を記載のうえinfo@moving-kyoto.jp宛にメールをお送りください。
お問合せ info@moving-kyoto.jp
主  催 MOVING 実行委員会
共  催 京都芸術センター
協  力 アートラインかしわ・VISIONS 2014、みずのき美術館
助  成 一般財団法人 ニッシャ印刷文化振興財団、公益財団法人 花王芸術・科学財団、公益財団法人 三菱UFJ信託地域文化財団
URL http://moving-kyoto.jp/
関連イベント:アートラインかしわ映像プロジェクト VISIONS 2014 映像のリプレイ

今年で2年目を迎える映像プロジェクトVISIONSは、昨年に引き続き、都市空間と映像文化の新しい関係性の構築をテーマとして柏の街を舞台に展開します。柏駅周辺のデジタルサイネージ、二番街商店街、京北ホールなど、柏駅周辺の様々な場所で、写真も含めた映像作品を上映・展示します。街を回遊しながら、世界的に活躍するアーティストからデビューしたばかりの若手まで、多様な映像作品を街中で上映・展示する貴重な機会となります。

本展タイトルの「リプレイ(再演、再生などの意)」は、私たちの生活を取り巻く環境や状況が持ち合わせている〈一回性〉と〈反復性〉、そしてそれらが入り交じる消費や娯楽、あるいは儀礼や信仰をめぐる現代社会のシステムそのものを表象する言葉でもあります。また街を舞台に展開することで、本来、映像が持っている場所性やアーカイヴ性の問題も同時に立ち現れてきます。

イベント名 VISIONS 2014 映像のリプレイ
会  期 2014年10月1日(水)~11月3日(月・祝)
場  所 JR柏駅周辺
(南口デジタルサイネージ、二番街商店街、二番街デジタルサイネージ、京北ホール)
出展作家 宮永亮
MOVING|柴田剛、土屋貴史、トーチカ、平川祐樹、水野勝規、村川拓也
表良樹、坂西未郁
プロデュ
ーサー
秦明生
ディレ
クター
島田浩太朗|キュレーター、美術批評
主  催 商店街振興組合 柏二番街商店会
協  力 JOBANアートラインかしわ実行委員会、MOVING実行委員会
入場料 無料
お問合せ JOBANアートラインかしわ実行委員会
TEL=04-7167-4455(平日10:00~17:00)
VISIONS 2014 事務局=visions.kashiwa@gmail.com
詳  細 http://visions-kashiwa.com/

財団助成イベント「MOVING Live 0 in Kyoto(京都公演)」レヴュー

Category: Digital Imaging





PAGE TOP