03, Jul 2015

金サジ(KIM SAJIK)個展「STORY」

会 期: 2015年6月16日(火)〜21日(日)
会 場: アートスペース虹
京都市東山区三条通神宮道東

金サジは、自己表現としての写真はもとより、記録写真、コンテンポラリーダンスの舞台写真などでも定評のある若手写真家である。踊る身体についていえば、自身も、金一志韓国伝統芸術院の一員として舞台に立つことがあるという。

作品としていくつかのシリーズを手がける中で、今回の個展は「物語」シリーズの作品で構成された。日本に生まれ育った金サジは、「物語」について、以下のように記している。

1_今在る私が、多神教、多文化の日本という国で育った記憶。
2_ご先祖様から受け継いできた身体の中、遺伝子の中に伝わっている記憶。
このふたつが重なったとき、私のなかにひとつの物語が産まれます。
私という存在を確認するために、
記憶をひとつひとつ紡ぎあげて、物語を創っていくのです。
これはわたしのための創世の物語です。
(個展に寄せたテキストより抜粋)

美術作品を安易に「自己表現」と言ってしまうことについて、筆者は、実は、しばしば疑問を感じている。自己表現を<私>の告白や独白と誤解している場合が多く、他者との関わりを拒絶しているからだ。ただし、求心的に自己に向き合ったとき、その存在そのものが社会的に強烈なメッセージをもつ場合がある。たとえば、最近の京都で作品を目の当たりにした、差別する側に生まれたオランダ系南アフリカ人:ウィリアム・ケントリッジ。<私>が意図せずに背負う世界の意味について、知性や芸術的感性や技術が、彼をただの<私>にしておかなかったのである。

金サジの「物語」もまた、けっして作品になり損ねた小さな<私>ではない。かといって、作家の生い立ちが作品に利用すべき特別な存在という意味でもない。ルーツの再確認ではなく、これから先を生きるための新しい「わたしのための創世の物語」が、若い作家にありがちな思考停止状態や感傷と距離を置いているのである。

「少女」は、韓国誕生の神話に基づく作品である。韓国の女性は熊から始まった。天から降りてきた神の子を産み、母となった。「三神ハルモニ」にも、国づくりの神話が重ねてあるように感じるが、金サジの作品の登場人物は、京都に実在する在日韓国人一世の老婆たちだ。3人とも、船に乗って日本にやってきて、今はもう90才を越えているという。深い皺の顔は、まるで焼きリンゴの表面のようだ。まなざしがとても強い。白いチマ・チョゴリに、3人それぞれの赤、青、黒色の胸の紐が鮮やかである。昔から使われる五方色から選んだ色だという。

モチーフは、人もモノも、作品「少女」のように、背景の漆黒から力強く浮かびあがっている。実写である。技法は、漆喰をシート状に加工したインクジェット印刷シートにプリント(フレスコジークレー)。今回の作品テーマを補完するように、絵画のような奥行きが大変効果的であった。撮影の技術も高くなっている。強い意志の感じられる、この先40代50代になったとき、ますます重要な存在の作家だと思う。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

「刃」2014年制作

「刃」2014年制作

「少女」2013年制作

「少女」2013年制作

「三神ハルモニ」2014年制作

「三神ハルモニ」2014年制作


金サジ(KIM SAJIK)個展「STORY」

Category: Events





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