11, Jan 2017

金津創作の森 アートドキュメント2016
森のライトアート 高橋匡太展 -光のフォークロア-

会 期: 2016年10月22日(土)〜12月11日(日)
会 場: 金津創作の森
室内展示=「Happy Birthday for Children」、「0 years old」、「Scene of Flowers」アートコアミュージアム1
野外展示=光のインスタレーション「森の灯々」、「ひかりの実」(11月26日〜12月11日)
〒919-0806 福井県あわら市宮谷57-2-19
TEL.0776-73-7800 FAX.0776-73-7805 http://sosaku.jp
主 催: 公益財団法人金津創作の森財団
共 催: あわら市 あわら市教育委員会
展覧会詳細ページ: http://sosaku.jp/event/2016/art-document2/
撮 影: 村上美都

12月は、街のいたるところでLED装飾が眩しい。綺麗だけれど、年々過熱する装飾は、ギラギラとして、ときに落ち着かない。

そんな街を抜け出して、福井県あわら市を訪れた。京都市在住の作家:高橋匡太氏の個展である。会場の<金津創作の森>は、自然の中に、展示棟、ガラスや陶芸の工房、作家のアトリエ、野外展示作品などが点在しているアートセンターだ。森の国フィンランドから来た友人が「日本には森がない」と言ったことがあるが、ここは、ムーミンだって住んでいそうな昔のままの森だ。自然と人と芸術が思いやりながら共存している。冷たい空気を吸って、木々の香や鳥の声や、暮れていく空の白い月を近く感じた。

野外の光のインスタレーション「森の灯々」は、木々の間に点在する100個の窓枠それぞれが白熱灯の暖かな光に浮かび上がる作品である。姿の見えない森の住人がいて、その家々に暮らしがあるかのようだ。県道から展示棟へと入る道では、街路樹に2000個もの「光の実」が揺れている。光源のLEDは、果物のように大切に袋に包まれて、色とりどりに柔らかな光を放っている。地元の子供たちが、袋のひとつずつに笑っている人の顔を描いた。訪れた最終日、森はもう闇に包まれようとしているのに、たくさんの子供、親子、老人がやってきて、思い思いに散策している。日没後は、森の時間である。暗がりや足元には道標のライトが置かれているが、野外展示にありがちなうるさいほどの注意看板もなくガードマンもいない。人々は、森の客人としての振る舞いをよく知っていて、光のインスタレーションを歓迎しながら、静かに、行儀よく、互いを気遣いながら、鑑賞と散策を楽しんでいた。この地方はもうすぐ雪に覆われる。本展のタイトルにあるフォークロアとは、古く伝わる風習・伝承のことだ。作品「森の灯々」が、まるで昔から伝わる冬支度の祭のように見えた。

高橋氏は、光や映像を用いた表現において国際的に活躍している作家だ。本サイトでの紹介は何度目かになり、作家自身によるコラムも掲載されている。
http://www.ameet.jp/column/169/#page_tabs=0
京都では、今秋「京都府立陶板名画の庭」でのインスタレーションを発表したばかりだ。

<金津創作の森>には、市民向けの創作体験、アート市、コンサートなど芸術体験プログラムのほか、一線で活躍する芸術家の作品に触れる機会として、アートドキュメントシリーズがある。本展はその第19回。あわら市は、2005年、高橋氏が前掲コラムにある「夢のたね」を行った町でもある。かつて「夢のたね」を体験した子供と高橋氏の10年ぶりの再会といえるだろう。高橋氏は、かねてから、表現そのものや周囲の人々へ慈しみに溢れた作家だが、ひとりずつというささやかな存在を照らしたいという想いは、近年ますます作品と直結しはじめた。また、表現者の素朴な思いとして、「皆で見たことのないものを見よう」という気持ちに勢いがある。共同制作・ワークショップに参加した子供たちのワクワクする気持ちが想像できる。昨今、地方芸術祭でのワークショップをおざなりとまでは言わないが、高橋氏ほどワークショップを大切にしている作家はごく少数だと思う。子供たちは、皆で見た光の情景を忘れないだろう。先々では、その鮮明な記憶に導かれて、作家や支援者など、芸術の誠実な仲間になる子が出現するかもしれない。現代美術の何が生き残るのか見当がつきかねる今、夢のようだったと口伝できる体験こそが重要なのではないかと思う。個々のフォークロア(伝承)が重なって、歴史になっていく。

展示棟における室内展示は、0歳児の顔写真365枚で構成する"0 year old"、ロウソクが灯る誕生日ケーキと幼児たちがスクリーン6面に映し出される"Happy Birthday for Children"。写真を寄せた地元の人々との共同作品である。および、花と子供たちのモノクロ写真が投影され、空間が徐々に花の色の光に染まる作品"Scene of Flowers"。会場音楽は、美術やダンス作品への楽曲提供者として活躍する山中透による。また、六甲オルゴールミュージアムから遠路運ばれた古いディスクオルゴールが1時間に一度"Happy Birthday to you"を奏でていた。100年を超えてきたオルゴールの櫛の歯(発音体)が、流れる時や生まれる命を数えるようだった。

清々しさと、希望に溢れた展覧会だった。
(松尾 惠 MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

Happy Birthday for Children

Happy Birthday for Children

0 years old

0 years old

Scene of Flowers

Scene of Flowers

ひかりの実

ひかりの実

ひかりの実

ひかりの実

森の灯々

森の灯々


金津創作の森 アートドキュメント2016
森のライトアート 高橋匡太展 -光のフォークロア-

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