06, Apr 2010
| 会 期: | 2010年2月6日(土)~3月14日(日) |
|---|---|
| 会 場: | 京都大学総合博物館 http://museum.kyoto-u.ac.jp |
御土居とは、天正19年(1591)に豊臣秀吉が築造した、高さ3~6m、全長約23kmにおよぶ堤のことで、かつて京都の町をぐるりと囲んでいた。東は鴨川、西は紙屋川、北は鷹峯、南は九条を限りとし、川沿い以外には堀があった。基底部の幅は15m超という分厚い土の壁、つまりは要塞で、京都は城塞都市であり、洛中洛外というのもこの御土居によって分けられた。江戸時代になっても、幕府の支配下でこの御土居は幕末まで維持されていたという。
いまも、切れ端が所どころに残る御土居の一部は、国指定の史跡として保存されている。私が初めてみた御土居は、北区平野鳥居前町のもので、お地蔵さんが並ぶその丸っこい土手は、ほのぼのした印象だった。続いて、御土居史跡公園となっている北区鷹峯旧土居町三番地の御土居を通りがかったが、急な斜面に木が生え、こちらは少し塞の雰囲気が感じられた。
では、江戸時代はどうだったか。それが詳細に分かる資料が、京都大学総合博物館に所蔵されている。「御土居絵図」全7巻。制作年は元禄15年(1702)、御土居築造から約100年後に200分の1の縮尺で描かれた絵図だ。折本のスタイルで1巻ごとの長さはそれぞれ異なるが、長いものは20mを超える。この絵図のデジタルコンテンツが完成。そして、記念の展覧会が同博物館で開かれた。
会場の入口近くにパソコンが2台。さっそく近づいたものの、コンテンツは今後も館に常設展示と書いてあったので、ちょっとチェックしてから、実物の絵図の展示をじっくりと拝見することにした。
デジタルコンテンツは2本だて。1本は「御土居ビューア」で、スキャンされた絵図が地図の上で閲覧できるというもの。ベースの地図は現代地図と江戸時代の地図で、自分で拡大縮小、移動など操作しながら見る。コンテンツには、同大学工学研究科で開発された超高精細平面入力大型スキャナで撮像した画像が使用されていて、どんどん拡大していっても画像がギザらない。もう1本は「3DCG解説ムービー」で、ミニ教育番組のようにわかりやすい。これが展覧会への導入にぴったりだった。よくあるビデオ上映と違うのは、画面下に時間経過を示すバー表示があることで、いつ終わるのか時間を気にせず視聴できた。
ムービーでまず予習。御土居の上には竹が植えられていた。3メートルの土塁の上に竹があったら、その高さたるや10数メートル。いかついけれど美しかったろう。雨や風の日は葉音がうるさくはなかったか。竹は用材で、それ故、江戸時代にはこの竹藪が管理されていた。絵図は御土居を管理するために必要だった。
予習の後、実物展示を見る。折れ曲がりながら町を囲んでいた御土居を、ストレートな巻紙にどうやって描いたのかというと、のりしろ部分が設けてある。つまり直角に御土居が曲がっているところには白い正方形がある。デジタル化する際はこののりしろ部分をつないだわけだ。絵は詳細に御土居の姿を伝える。竹、松、梅…木の一本一本。石積み、鳥居、小橋に跳ね橋…。キャプションには展示されたシーンの見どころが書いてある。たとえば紙屋川の「蛇籠」は、長い筒型の籠の中に石を詰めた治水のための仕掛け。鷹峯の長坂口には「髪結床」とあり、これは通行人の監視や道路の掃除のための小屋。見れば見るほど、自分がスケールダウンしてその風景の中に入っていける。細かい絵だからこそ、画像上での拡大もしがいがあるというものだ。
会場を一回りした後、御土居ビューアを拝見。拡大したり縮小したり、画面上をずんずん移動したり、とくに研究目的がなくてもなかなかに楽しい。グーグルマップ上で広げられれば実際に御土居に行った時にも便利、などと思いながら、再び、実物を見た。
映像よりやっぱり絵の方がいいなあ。実際に広げてもらってありがたいと思う。しかし、欲望が頭をもたげる。絵巻や地図の展示を見るといつもそうだ。「なんでプリントしてくれないの?」と。ガラスケースの上からのぞくというスタイルではしっくりこない。手に持って見たいのだ。地図なんかも折ったり横に向けたりしたい。絵巻もくるくるしたい。画面にタッチするのもよいけれど、スキャンした画像をプリントしてのりでつないで、数部いや一部でいいです、置いてもらえるととてもうれしい。
展覧会は終わったが、デジタルコンテンツは博物館で常設展示中。実物の御土居の方も、北野天満宮に残る御土居ではサクラがちょうど満開だろう。ぜひ、両方をお楽しみされたし。
(塚村真美 workroom)
御土居絵図デジタルコンテンツ完成記念展覧会
「いま、御土居がよみがえる」
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