04, Nov 2011
| 会 期: | 2011年10月8日(土)~ 10月23日(日) 平日13:00~20:00 / 土日祝 12:30~20:00 |
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| 会 場: | art project room ARTZONE http://www.artzone.jp/ |
| 出品作家: | 大島真悟、神馬啓佑、高井裕、土井裕介、王婷瑩 |
| 審査員: | 長谷川祐子(東京都現代美術館チーフキュレーター)、浅田彰(批評家)、椿昇(現代美術家)、名和晃平(彫刻家)、後藤繁雄(編集者/クリエイティブディレクター)、ヤノベケンジ(美術作家/ウルトラファクトリー・ディレクター) |
| ウェブサイト: | http://ultrafactory.jp/ULTRAAWARD2011/ |
| 写真クレジット: | 撮影:表恒匡(SANDWICH) 画像提供:ULTRA FACTORY |
京都造形芸術大学の特殊教育機関ウルトラファクトリーが主催する「ULTRA AWARD」は、世界で活躍できる次代のウルトラアーティストを発掘、育成するためのコンペティションだ。応募条件は京都造形芸術大学在学生、および卒業修了生(卒業終了後2年以内)。会場であるARTZONE には約3 ヶ月の制作期間を経て完成した、選出作家5 名の新作が展示された。
会場入口前に立つと初めに目に飛び込んでくるのが、大島真悟さん(2010年大学院芸術表現専攻修了)の球を用いたインスタレーション『Wald』だ。展示空間に持ち込まれた棚や木パネルの上に、バランスボールと同サイズ(実際にバランスボールで型取りしている)の白い球体を置くという、日常的な興味を延長した作品となっている。作家本人が「絵画の上に立体を乗せるとするならば、唯一平面と点で接することのできる球だけ」と語っているように、"絵画的な興味"が"立体と空間の関係に対する興味"へと発展しているため、極めて絵画的な印象を持っている。螺旋階段があるなど、完全なホワイトキューブではないARTZONEという空間だからこそ今回のような仕上がりになっていたが、場所を変えると空間性=作品性も大きく変わるという意味で、今後の広がりが期待できる手法ではないだろうか。
大島真悟『Wald』
奥に進むと高井裕さん(情報デザイン学科先端アートコース在籍中)の中古仏壇を改造した作品『スイート仏教ちゃん』に向かって、作家本人が手を合わせている。「お金さえあれば救われる」という思想を現代の宗教として視覚化するため、ラインストーン(模造宝石)やピンクの塗料で仏壇を装飾。毳々(けばけば)しい仏壇を現代の日本人代表として作家自身が拝むことによって、作品を成立させることが意図とするところだ。「拝む対象そのものに仏や神がいるわけではなく、拝んでいるその瞬間が仏」という仮説を軸に制作しており、会期中はできる限り作家が在廊して、自らの作品を拝んでいるのだそう。会場で作家に「なぜ"現代社会"といった広い範囲をテーマにするのか」と尋ねたところ「身近なところは近過ぎて作品にしたくない」との回答が返ってきた。現段階ではこうした、ある種の遁逃的な姿勢の中にむしろ作家性があるように感じる。
螺旋階段を上がってすぐの通路と、吹き抜け奥の壁に展示されているのは王婷瑩(ワン・ティンイン)さん(大学院芸術表現専攻在籍中)の作品『text』。通路に設置された、キーに何も印字されていない大きなキーボードを叩くと、吹き抜け奥の壁にプロジェクションされている画面に、言語や記号などがタイプされるというインタラクティブな作品。操作している人自身も何がタイプされるかわからないので、意味のある言葉が偶然現れた時は特有の楽しさがある。また、記号を絵文字のように見立てて楽しんでいる来場者もいた。本作のテーマついて、作家本人が「鑑賞者と交流する作品を作りたい」と語っていた。もとあるコミュニケーション・ツールをうまく使うのでなく、完成されたツールの要素を欠落させた状態で提示することで、新しくて少し奇妙なコミュニケーションを作り出そうとしているところに好感が持てる。
王婷瑩『text』
昨年行われた第一回のULTRA AWARDは、大賞こそ映像作品だったものの、全体的に造形技術のクオリティーが高い作品が目立つ、造形工房らしい展覧会に思えた。ただし今年はメディア・アート、陶芸、建築的なアプローチといった、作品の幅の広さが生みだす組み合わせの意外性がひとつの見所だったように思う。こうした傾向は、ウルトラファクトリーという場所自体の幅をも拡張し得る可能性を持っているのではないかと感じた。
2階のギャラリー内には2つの作品が展示がされていた。奥のスペースに展示してある作品は土井裕介さん(2011年芸術学部美術工芸学科陶芸コース卒業)の陶芸作品『sky riders』。器の実用性を破綻させ、"実用と非実用"、"アートと工芸"という境界線を浮き彫りにするようなストレートなコンセプトを持った作品だ。ひとつの大きな円柱の台の上に、器とオブジェどちらともつかないような作品が多数乗せられているのだが、その表情は一つひとつ異なっている。それぞれの用途を考えたり、形からイメージを膨らませることで、鑑賞者は想像を触発される。今回は実用性を破綻させること自体に作家自身の興味が向かっていたように思うが、今後コンポジションや見せ方、細部のこだわりを掘り下げてさらにその個性を磨くことで、強いオリジナリティーを持った作品に変貌する。そんな可能性を感じさせる作品だった。
最後の作品はギャラリー内に仮設された、絵画を展示した部屋自体を作品とした神馬啓佑さん(2011年芸術表現専攻修了)の『r』。本作品は今回のAWARDで最優秀賞を受賞している。部屋に入ると、眼球に痛みを感じるほどの強い光に照らされた真っ白な室内に、数点の絵画作品が展示されている。入り口で手渡されたコンセプト・シートによれば、「絵画と展示空間の境界を曖昧にすることで、すべてが等価で、自分自身さえも融合していくような場を創り出す」ことが作家の目的とするところだという。平面的思考でも、建築的思考でもなく、「平面への興味から建築的な興味に発展する」という、興味のありよう自体を作品化しているところが興味深かった。
神馬啓佑『r』
担当スタッフの方のお話を伺うと、神馬さんはこれまで平面の絵画作品を制作してきており、今回のような形態の作品を制作したのは初めてだそうだ。AWARD選出作家には制作補助費(1名につき上限10万円)の支給、ウルトラファクトリースタッフによる制作技術支援などの優遇が与えられる。このことからも分かるように、ULTRA AWARDは通常のコンペティションよりも「育成」に力を入れており、作家を育てるための仕組みを具体的に取り入れているという点で、他のコンペティションとは一線を画している。つまり「作品が優れている」ということは前提条件としてありつつも「3ヶ月間でどれくらい飛躍したか」という変化の度合いも審査に大きく関わってくる。担当スタッフの方からお話を伺ったところ、神馬さんは"飛躍面"で評価されたのではないかと感じた。
5作家の共通点として感じたのは、個人的な興味を追うことで、作品を成立させようとする純粋な姿勢だ。個人の興味を掘り下げていくと、誰にも真似のできない強固なオリジナリティーが生まれる。そのうえで世界との繋がりを意識した丁寧な制作ができれば、鑑賞者がディティールから深くて大きい世界に飛躍できるような作品が生まれる。今回の経験は彼らがそうしたプロセスを経ながら、世界に通用する作家として羽ばたいていくための重要な通過点となっただろう。
(中本 真生 &ART/株式会社フィールド/アーティスト)

会場風景(1階)

大島真悟『Wald』

高井裕『スイート仏教ちゃん』

王婷瑩『text』

土井裕介『sky riders』

神馬啓佑『r』

会場風景(2階)

公開審査会風景
ULTRA AWARD 2011
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