04, Sep 2013

11年目を迎える京都のDIY音楽フェスティバル
ボロフェスタ2013 インタビュー 飯田仁一郎

2002年より続く、京都を代表するミュージック・フェスティバル"ボロフェスタ"。100人以上のボランティア・スタッフと主催者が一緒になって、会場設営から一切のイベント運営までを行っており、今年は10月25日(金)、26日(土)、27日(日)の3日間、京都KBSホールとMETROでの開催が予定されている。本特集では、立ち上げメンバーで現代表の飯田仁一郎さんにフェスの概要から、根本にある音楽を取り巻く環境についての考え方まで様々なお話を伺った。

聞き手:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO、&ART編集長、MOVINGディレクター)
インタビュー撮影:表恒匡

飯田仁一郎

ボロフェスタとは

――まずはボロフェスタがどういうフェスティバルか、概要を教えてください。 僕らはボロフェスタのことを"DIY音楽フェスティバル"と呼んでいます。DIYの定義は「プロのイベンターを入れず、自分たちだけで作る」ということです。ボロフェスタを立ち上げたきっかけは、はじめてFUJI ROCK FESTIVALを観て衝撃を受け、さらにLimited Express (has gone?)(※1)で同フェスに出演したことなどを通して、「確かにすごいけど自分たちでも出来るんじゃないの?」と思ったことでした。当時はやり方がわからなかったので、プロを入れることもできず、自然とDIYフェスになっていきました。

――現在京都には、くるりが主催する京都音楽博覧会(※2)や、10-FEETが主催する京都大作戦(※3)など、ボロフェスタがスタートしたときにはなかったいくつかフェスがあります。京都で行われている他のフェスとの違いはどのようなところだと考えていますか。 「一アーティストが中心になって作るフェスではない」ということが最も大きな違いだと思います。京都音楽博覧会に"くるりプレゼンツ"、京都大作戦に"10-Feetプレゼンツ"という冠がつくなら、ボロフェスタは"ボロフェスタ実行委員プレゼンツ"なんです。ではボロフェスタ実行委員に誰が入るのかというと100人のスタッフたちです。
例えばNHKでやっていたAIR JAM(※4)のドキュメンタリーでは、Ken Yokoyamaさんがステージから降り、たくさんのスタッフに「お疲れさま」と声をかけるシーンがとても美しく描かれていました。たぶんくるりのフェスも10-FEETのフェスもそういうやり方だと思う。
でもボロフェスタではステージから降りて彼らに挨拶をすることはしない。僕らはたくさんのスタッフに「このステージに上がってこい。俺たちもスタッフもZAZEN BOYSだってみんな一緒だ。あなたたちもノーギャラかもしれない、もしかしたら俺たちも大赤字かもしれないけど、そんなことより大事なのはお客さんをどのように迎えるか。全員でお客さんを楽しませよう。ボロフェスタはDIYフェスであっても僕たちはプロなんだ。」ということを言い続けます。感覚的な話になってしまうのですが、決定的に違うのはそこかなと思います。
あとはラインナップの違いも大きいです。僕は配信サイトのOTOTOY(※5)、立ち上げメンバーのゆーきゃん(※6)はオンラインストアのSunrain Records、同じく立ち上げメンバーの土龍(もぐら)くんはLive House nanoで働いていますし、手伝ってくれているジャックはMETROでブッキングをしています。ミュージシャンの情報が一番集まるところで働いている実行委員を中心にラインナップを決めていることによる幅広さは、くるりや10-FEETでもかなわないと思います。

※1)YUKARI(Vo,B)、飯田仁一郎(G)、TDK(Dr)からなるスリーピースバンド。WHY?、DEERHOOF、ダムド等の日本公演のサポートを経て、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドとして認知されている。2013年、Less Than TVから4th album『JUST IMAGE』をリリースした。
http://www.limited-ex.com/

※2)くるりがオーガナイザーとなり開催する、ノンジャンルかつ幅広い国内外の音楽を紹介する野外フェス。 くるりの地元である京都で2007年から毎年開催されている。会場は梅小路公園。
http://www.kyotoonpaku.net/

※3)10-Feetが企画する野外ロック・フェス。2008年から10-Feetの地元である京都府宇治市の京都府立山城総合運動公園(太陽が丘)にて毎年開催されている(2007年は台風の接近により中止)。
http://www.sound-c.co.jp/kyotodai/13/

※4)パンク・ロックバンドHi-STANDARDを中心に企画されている野外ロック・フェス。1997年からこれまでに計5回開催されている。2012年は宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で行われた。
http://www.airjam.jp/index_pc.html

※5)OTOTOYは、読んで、聴いて、買えるミュージック・ダウンロード・サイト。購入可能なファイル形式は、DRMフリーの手軽なMP3、WAV、HQD(24bit 48khz以上の高音質WAV音源)、そしてDSD(Direct Stream Digital)。配信だけでなく、様々な属性の音楽ライターやアーティスト自身によるインタビューやレビュー等の記事を掲載している。
http://ototoy.jp/music/

※6)シンガーソングライタ。ボロフェスタ主催メンバーのひとり、オンライン・CDストアSunrain Records管理人。あらかじめ決められた恋人たちへのリーダー池永正二とのユニット シグナレス、および5人組フォークロック・グループ欠伸 ACBISでも活動中。
http://akaruiheya.moonlit.to/


飯田仁一郎 IIDA Jinichiro
飯田仁一郎 IIDA Jinichiro

オルタナティブ・バンドLimited Express (has gone?)を主軸に、10年続く音楽フェスティバルBOROFESTAやレーベルJUNK Lab Recordsを主催。また、音楽配信サイトOTOTOYやリアル脱出ゲーム等のコンテンツを仕掛けるSCRAPのプロデュース、そして破壊専用ギターSMASH、東京ボアダム、廃校フェス等にも関わる。東日本巨大地震後、5日間で発売した112アーティスト、112曲の6枚組アルバム『Play for Japan』の発起人&プロデュース。


アーティストの選出

――どうやってアーティスト選出しているんですか? 「この人を呼びたい」という気持ちが一番大事なので、まずみんなに「今年誰が呼びたいか」と聞きます。Mr.Childrenが呼びたいという人もいれば、クリトリック・リスが呼びたいという人もいます。その中で本当に呼べる人、どうがんばっても呼べない人などを判断しながら、選出についてしっかり話し合っていきます。
その後アーティストを四段階に分けて落とし込んでいきます。第一段階はZAZEN BOYSやソウル・フラワー・ユニオンなど、いい意味で箔がついているアーティスト。第二段階はBiSや忘れらんねえよなど、2、3年前からボロフェスタが応援していて、でかくなって帰ってきたアーティスト。第三段階はMILKやDJみそしるとMCごはんのように、今勢いがあり、BiSや忘れらんねえよのように将来でかくなり得るアーティスト。特に僕とゆーきゃんが、「今このバンドがかっこいいからぜひみんなに観てほしい、そしてさらに大きくなってほしい」という思いで呼んでいます。そのためにUnderground Stageや、bee low stageなどの小さいステージも設けています。第四段階はLimited Express (has gone?)やゆーきゃんも含め、主催で関わってくれている人や、京都、大阪在住のボロフェスタがない限りはなかなかフェスに呼ばれないけれどいいアーティスト。そういうアーティストもしっかりブッキングしたいと考えています。

――今年は10-FEET、モーモールルギャバン、tricotと大前夜祭が京都勢で固められていますね。これにはどういった意図があるのでしょうか。 10-FEETは土龍くんがブッキングを担当しました。10-FEETは僕らとほぼ同世代なのですが、東京から京都に戻ってきてまだ第一線で活動している感じや、バンドのぶれない活動方針、京都大作戦の開催など、特に最近の彼らの活動を非常にリスペクトしています。だから、まず京都のバンドとして10-FEETを呼びたかった。
彼らは今回のラインナップでも一番人気があるので、お客さんがたくさん来ると想定し、長い時間演ってもらうため前夜祭に出演してもらうことになりました。
その後、ROTTENGRAFFTYやthe HIATUSなど、10-FEETが普段一緒にやっているアーティストでない、ボロフェスタらしい組み合わせを考えた時、モーモールルギャバン、tricotが候補に挙がり、「それならば前夜祭は京都勢で打ち出そう」ということになりました。「京都にこれだけ面白いバンドがいるんだぜ、東京だけじゃないんだぜ」ということ伝えられたら勝ちだと思っています。

――飯田さんは2011年、OTOTOYに掲載された対談記事で「今年は渋さ知らズとか、ソウル・フラワー・ユニオンとかをどうしてもよびたかった。今年のブッキングのテーマは、震災後に動けたバンドをよびたいと思ったんです。(※7)」とおっしゃっていましたが毎年テーマがあるのでしょうか。 あります。2011年は“粘り強く”と“復興”、昨年は“めっちゃええフェス”でした。“めっちゃええ”はお客さんの顔のことです。例えばROCK IN JAPAN FESTIVALのお客さんがフェスから帰るときいい顔はしていると思うのですが、その顔は僕の描く“めっちゃええ”ではないんです。“めっちゃええ”にはサブカル臭もアングラ臭もメジャー臭もあって関西っぽい。その感じなんですよね。新しいものを知った瞬間や、未知のものに出会った瞬間。それによって興奮して笑顔になる感じを、会場の雰囲気をひっくるめて“めっちゃええ”という言葉で体現したかったんです。
今年は“めっちゃええ”が表のテーマで、裏のテーマが“カオス”です。僕たちは昨年でボロフェスタが完成したと思っているのですが、その完成を潰したいとも思っています。新たにbee low stageを入れたり、大喜利をやったり、まだ発表していないことも合わせ、ぐっちゃぐちゃにしたいという意味で“カオス”にしました。

ソウル・フラワー・ユニオン/踊れ!踊らされる前に [Trailer]

忘れらんねえよ/僕らパンクロックで生きていくんだ ミュージック・ビデオ

MILK

MILK(nano ボロフェスタでのライブ、2013年8月25日) 撮影:表恒匡

※7)引用元:OTOTOY 特集 ぼくらの文楽×ボロフェスタ「D.I.Y. フェスティバルのつくりかた」 対談/飯田仁一郎(ボロフェスタ)×船山裕紀(ぼくらの文楽)
http://ototoy.jp/feature/index.php/2011090300

飯田仁一郎
飯田仁一郎

地域や社会に与える影響/
アーティスト主導のフェスであるということ

――フェスティバルが地域や社会に与える影響をどのように考えていますか。 ボロフェスタは100人のスタッフで運営していますが、それは同時に100人の人材を育てているということです。ボロフェスタを体験したことで、好きな音楽のジャンルが広がり、自分でフェスをするということを覚え、音楽業界に巣立っていく人も少なくありません。N'夙川BOYSは元ボロフェスタスタッフが担当ですし、MTVで働いているやつもいます。それが最も社会に影響を与えていることだと思います。
また最近では地方から「僕もフェスをやりたいから教えてください」という問い合わせがたくさん来ます。スタッフにも「自分の地元でボロフェスタのようなフェスがしたい」と考えている人がいますが、そういう人は超ウェルカムですね。正直にいうと僕は「ねぷた祭りも阿波踊りも楽しいけど、いつまでそれをやっているの?」と思っています。「昔の人が作ったものに乗っかるのではなく自分たちで作れよ。今一番ホットで、祭りと結びつくものは音楽しかないじゃん。じゃあフェスやろうよ」と。
例えばアーティストは全国のフェスを回れば、ライブハウスを一つずつ回るより、たくさんの人に自分たちの音楽を広めることができる。富山でフェスをやれば、富山から出ていく人が減るだろうし、富山に帰ってきたいという人も増える。だから僕はDIYフェス、ローカルフェスが全国に乱立すればいいと思っています。実際に僕はボロフェスタがないと京都に戻る理由がないですから。ボロフェスタがあることで京都に戻って、知らないアーティストをいっぱい観て「すげぇ」って言える。フェスをやることで街とアーティストに一番返ってくる。それってすごくいい文化ですよね。
ただ地域とか社会に対しての影響をはっきりと実感するのは2、3年後など、もうちょっと先だということには気付いているので、まずは継続することが一番重要だと思っています。

――ボロフェスタを企画するうえで、飯田さんは「自分自身がアーティストである」ということが、どのように影響していると思いますか。 ゆーきゃんと僕は常に「アーティストの立場で企画をする」ということについて悩んでいました。でも、アーティストをやることも、企画をやることもびっくりするくらい自分に返ってくるんです。
OTOTOYの編集長として、アーティストの話を聞く時に、自分がアーティストだから彼らの気持ちが全部わかるし、アーティスト目線でやってきたことが、何か別の考え方に結びついたりすることもある。イベントがどういう仕組みで行われているかもよくわかるし、年齢を重ねていくと企画をやってきた経験が役に立つことは多い。
アーティストとしてだけでは食えていないし、そこに対する挫折はあったけれど、でも挫折したということが人生という長い道のりの中で、さらに先を見たとき役に立っている。やれる人は全部やったほうがいいし、やれない人は無理にやらず、やめたほうがいい。
考え続けたことでそこは超えたと思うし、それを超えられたのは「間違っていなかった」という自負があるからです。

――飯田さんは今アーティストとしての収入だけで食べていけたら、アーティストだけをして生きていきたいと思いますか。 思わないです。OTOTOYにも、SCRAP(※8)にも部下がいるし、そいつらとものごとを作っていくことがめちゃくちゃ楽しいので。だから今Limited Express (has gone?)にメジャーデビューの話が来たら、僕とドラムのTDKは断ると思う。ミュージシャンだけで生きている人たちもかっこいいですし否定はしないですが、仕事をしながら音楽をするということも肯定しています。音楽だけで食べていけなくても、例えアフター5で活動しているバンドだったとしても、かっこいいものはかっこいい。それだけですね。

※8)株式会社SCRAPはリアル脱出ゲームなどのイベント企画や、同名のフリーペーパー発行(現在は休止中)などを行う企業。本社は京都市中京区。
http://www.scrapmagazine.com/

飯田仁一郎
飯田仁一郎

音楽を取り巻く環境についての考え方

――これまでのボロフェスタで輸入盤規制法(※9)、風営法改正(※10)などをテーマにしたトークを行っていますが、少なくともボロフェスタはフェスによって“音楽を取り巻く環境”についてもフォローしようとしているように感じます。意識して音楽を聞かせるという以上の機能を持たせようとしているのでしょうか。 そうですね。それは特に僕とゆーきゃんが意識していることです。2011年は原発のデモに参加していたのが僕とゆーきゃんぐらいだったということがあって企画しました。スタッフはデモがあるということを知らないだけだから、隣のやつが「デモに行こうぜ」と声をかけたらデモにもいっただろうし、原発や風営法の問題があるということを音楽好きの人たちに知ってもらいたいという気持ちがあったので取り入れたいと思ったんです。すごくピュアな気持ちがモチベーションにありますね。知りたくない人は知らなくていいし、知りたい人は知ったらいい。僕はもちろん知ったほうがベターだと考えています。

――ボロフェスタの特長としてスポンサーいないことが挙げられますね。これはなぜなのでしょうか。 これくらいの規模のフェスならば、スポンサーなしでできるということを知ってしまったということが大きいです。スポンサーがいないので自由にやれるということもわかっていますし、そもそも3~5000人の規模ではスポンサーにメリットもないですしね。

――これまでに会議の中で「スポンサーをつけよう」という話にならなかったんですか。 なってもやり方がわからなかったんです。今はよくわかっていますが、つけなくてもいいと思います。

――音楽業界って弱者が搾取されている部分も多いとは思いますが、もともとCDの売り上げや、ライブの入場料で成り立っていることを考えれば、個々のアーティストが少額ファンドで支えられている状態にあるじゃないですか。地道に頑張れば自分を支持してくれる人たちに支えられて生きていけるって可能性ですよね。 難しい問題ですが…僕はレコ屋や配信サイト、メディアとか、アーティストとリスナーの中間にいる人のことを信じているんです。SMSだけで宣伝しているアーティストって絶対でかくならないじゃないですか。だから個人対個人の関係がいいとは思わないですね。
僕はTSUTAYA 西院店で9年間働いていたのですが、毎年売り上げが20%ずつ落ちていったことに危機感を感じ、OTOTOYの立ち上げメンバーに加わりました。OTOTOYがでかくなって、たくさんのアーティストに還元できればアーティストはそのほうが幸せだし、全然有名じゃないけどライブハウスを埋められるようなバンドが、昇り詰めて大きくなり、そのアーティストに見合った知名度、キャパシティーに到達すればいいと考えています。
七尾旅人さんが立ち上げたDIY STARS(※11)は、売上から決済代行手数料約5.5%を引いた額がそのままアーティストの利益になるシステムで話題になりましたが、じゃあ「WEBサイトの制作や管理など、中間の人たちに対するお金はなくていいの?」と思います。
レコ屋で汗を書きながらコメントを書いている人たちをブッ飛ばして、自分たちだけが儲けたらいいなんていう世界があっていいわけない。ボロフェスタも同じで、ミュージシャンだけがハッピーになるんじゃなくて、そこにいるたくさんのスタッフやメディアの人たちと一緒に盛り上がりたい。それがものごとを広げるということですし、ボロフェスタよりも動員数が多い京都音楽博覧会や京都大作戦と同じくらいの知名度でボロフェスタを知ってもらえている理由はそういうところにあるのだと思っています。

※9)2004年に音楽評論家の高橋健太郎氏と小野島大氏による、「音楽を聴く自由」についてのトークライブ(当時問題となっていた「輸入盤規制法」に関する話題がメイン)を開催した。

※10)2012年のボロフェスタではトーク・イベント“NO DANCE NO NIGHTー何故、風営法改正を求めなければいけないのか?ー”を開催。出演は飯田仁一郎、田中郁后(音読 編集長)、三上侑貴 弁護士(Let's DANCE法律家の会設立準備会 事務局次長)。
風営法改正については Let's DANCE WEBサイト や本特集に2012年掲載した記事Let's DANCE 署名推進委員会主催 Let's DANCE ダンス規制法を考えるつどいを参照。

※11)DIY STARSは、オフィシャルサイトにて楽曲ファイルなどのダウンロード販売を可能にするWEBサービス。「アーティスト自らが作品を発表し、自身の手でユーザーに届ける」 というコンセプトを元にシンガーソングライターの七尾旅人氏とビジュアルアンドエコー・ジャパンの共同で開発された。
http://www.diystars.net/

飯田仁一郎
飯田仁一郎

メジャーとアンダーグラウンド/震災を経て

――昨年LOSTAGEのメンバーがTwitterで「お金払ってインタビューしてもらう事に対する違和感」(※12)についてつぶやいていたじゃないですか。僕自身、自分でイベントを企画した際、ある大手メディアから「十数万円でインタビュー記事を掲載しませんか」という営業メールが来てすごく嫌な気持ちになったんです。
「単純にいいアーティスト/イベントを取り上げているわけじゃない」ということがわかると、読み手はそこに書いてある言葉を疑ってしまいます。僕はインタビューする時や、自分の企画したイベントに出演してもらう時、アーティストと信頼関係でつながることをとても大事にしているし、自分の企画したイベントに来てくれたお客さんからの「楽しかった」という言葉が自信になっています。それが続けていくためのモチベーションになっているのに、アーティストと企画者、発信する側と受け手の信頼関係が崩れたら続ける意味までなくなってしまう。
そのために不利になることがあっても、意地を張りながら魂を売らずにアイデアと信頼で模索していきたい。僕にとってはメディア運営も、イベント企画もそのための方法の一つだと考えています。
僕の場合は魂を売ったっておもしろいことも興奮も生み出せると思っています。そこに対しては自信があります。TSUTAYAで働いているときは全力でアンダーグランドなバンドを推していましたが、それと同じくらい全力で浜崎あゆみを推していました。その時TOWER RECORDS 京都店は、自分たちのブランドじゃないという理由で浜崎あゆみを推さなかったのですが、TSUTAYA 西院店は、それでトータルの売り上げを底上げしたんです。
僕らは「浜崎あゆみは人気もあるし、それなりのクオリティーもあるから売ったらいいじゃん」と考えました。だから「本当に飯田が売りたいものは何?」と聞かれると、「お金になる浜崎あゆみと俺が推したいアンダーグラウンドのアーティストです」と答える。
例えば普段アンダーグラウンドで活動しているアーティストに、ももクロの前座の話が来たとして、そこで演れないアーティストはダメだと思うんですよ。数万人の前で演れるチャンスなんだから、かっこ悪くたって演ったらいいじゃないですか。「知らない人に届けたい」というのが僕の理念なので、メジャーなものとアンダーグラウンドなものの融合には興奮しますし、ちょっと押し付けがましいかもしれないけど、メジャーなものを好きな人たちに新しい出会いがあればファンにとってもいいと思います。
ビジュアル系のバンドのファンが、Limited Express (has gone?)を観たとき、反応してくれない場合が多いと思いますし、個性が強すぎる人たちは呼びにくいかもしれませんが、アンダーグラウンドに対するこだわりだけでなんとかなるとは思っていないかもしれないですね。

――僕もメジャーを推す=魂を売るとは思っていないですよ。でもメジャーにしてもアンダーグラウンドにしても、「このアーティスト、このアルバムは推したくない」と思ったとき、笑顔でそれを薦められる自信がない。 ボロフェスタに関しては個人の好き嫌いが多少影響していますが、OTOTOYに関しては好き嫌いで判断してないですね。自分が好きじゃないアーティストだったとしても、その隣にくるりのCDを並べて売ればいい。やり方は色々あると思います。僕は確実にそっち側の人ですね。

――最後の質問です。2011年東日本大震災があって考え方が変わった人も多いと思いますが、飯田さんは震災を通じて、自分の活動に関して考え方が変わったところはありますか。 粘り強くなりました。東日本大震災の時は東京にいて、阪神・淡路大震災の時は関西にいたので、僕は震災をくらったのが2回目だったんです。阪神・淡路大震災の時は震源地の近くに住んでいたので、僕が高校を卒業する頃にはまだ仮設校舎でした。その経験は糧になっているし、10年くらい経ってようやく神戸の長田が戻ったことなどを決して忘れてはいけないと思っています。
東日本大震災の募金だって1年で終わったらダメで、2年、3年と続けていかなければいけない。震災後『Play for Japan』(※13)という東日本大地震救済支援のコンピレーション・アルバムを企画したのですが、募金を集めたり、行動を起こすことで震災を忘れないようにするなど粘り強く援助していきたいです。

飯田仁一郎

nano ボロフェスタにて(2013年8月25日、Live House nano前)

※12)詳細は以下のまとめ“音楽誌にまつわるオトナの事情”参照。
http://togetter.com/li/275247

※13)『Play for Japan』 は東日本大地震救済支援を目的に企画されたコンピレーション・アルバム。
vol.10までリリースされており、クレジット決済手数料約5%と、著作権管理事業者へ登録済の楽曲に関しては、著作権料約7.7%を除いた全ての売り上げが、東日本大地震の義援金として、日本赤十字社を通じて寄付された。
http://ototoy.jp/feature/index.php/2011031604
http://ototoy.jp/feature/index.php/20110401
http://ototoy.jp/feature/index.php/20110616


中本真生 Nakamoto Masaki
中本真生 Nakamoto Masaki

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。京都嵯峨芸術大学造形学科油画専攻修了。&ART編集長。映像芸術祭“MOVING 2012”ディレクター。アーティストとして"なかもと真生"名義で活動する。

Photo by OMOTE Nobutada

&ART
http://www.andart.jp/

MOVING公式WEBサイト
http://www.moving-kyoto.jp/


ロゴ

ボロフェスタとは

2002年より続く、京都のミュージック・フェスティバル。知名度の有無やジャンルに関係なく主催者が「観たい! 呼びたい!」と思うアーティストのみをブッキング。100人以上のボランティア・スタッフと主催者が一緒になって、会場設営から一切のイベント運営までを行う、典型的なインディ・フェス。

ボロフェスタ WEBサイト

http://borofesta.ototoy.jp/v/top/

出演アーティスト

アクト

10-FEET / モーモールルギャバン / tricot / Polaris / ソウル・フラワー・ユニオン / ZAZEN BOYS / Limited Express (has gone?) / OGRE YOU ASSHOLE / EP-4 / cero / WHITE ASH / SOIL&"PIMP"SESSIONS / ゆーきゃん / Nabowa / the telephones / キュウソネコカミ / オワリカラ / THEラブ人間 / 大森靖子 / ザ・シックスブリッツ / Predawn / でんぱ組.inc / BiS / BiS階段 / 非常階段 / にせんねんもんだい / 忘れらんねえよ / Homecomings / 南壽あさ子 / 柴田聡子 / DJみそしるとMCごはん / 要!チェケラッチョ! / Wienners / and Young... / 都市レコード / carpool / MILK / OBUTSUDAN-SUMINO / BLONDnewHALF / メシアと人人 / 花泥棒 / Amia Calva / Hi,how are you? / my ex / クウチュウ戦 / Enjoy Music Club / 安藤明子 / バイセーシ / ワンダフルボーイズ / manchester school≡ / 踊ってばかりの国 / tofubeats / neco眠る / ときめき☆ジャンボジャンボ / HALFBY / Sugar's Campaign / PAMS / 小野真&小山内信介 / odd eyes / ボギー / mogran’BAR

アクシデント・アクト

MC土龍 / ボギー / クリトリック・リス

ダイナマイト・アクト

TRIPMEN

開催概要

イベント名 ボロフェスタ2013
日時 2013年10月25日(金)、26日(土)、27日(日)
会場 京都KBSホール、METRO
料金 大前夜祭券[25日(金)] : 前売 3,300円/当日 4,000円
1日券[26日(土) or 27日(日)] : 前売り 4,200円/当日 4,700円
2日券[26日(土)& 27日(日)] : 7,700円(限定200枚)
3日券[2日通し券+大前夜祭] : 10,700円(限定200枚)
vol.夜露死苦券 : 前売 2,500円 当日 3,000円 ※キャッシュバックあり
3日券早割 : 8888円(88枚限定)
お問合先 メール : boro-info@borofesta.ototoy.jp
10-FEET

10-FEET

ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYS

Limited Express (has gone?)

Limited Express (has gone?)

ゆーきゃん

ゆーきゃん

BiS

BiS


11年目を迎える京都のDIY音楽フェスティバル
ボロフェスタ2013 インタビュー 飯田仁一郎

Category: Feature





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