29, Jun 2012

Let’s DANCE 署名推進委員会主催
Let’s DANCE ダンス規制法を考えるつどい

音楽家の坂本龍一氏や大友良英氏、弁護士の中村和雄氏など、9名の呼びかけによって組織されたレッツダンス署名推進委員会。風営法によるダンス規制からクラブシーンを守ることを目的として組織された本委員会主催によって、2012年6月10日、旧WORLDで開催されたトークイベント『Let's DANCE ダンス規制法を考えるつどい』の第一部を掲載する。

ゲストスピーカー:PIKA☆(音楽家)、磯部涼(音楽ライター)、中村和雄(弁護士)、斉藤貴弘(弁護士)
記事編集:中本真生(&ART編集長、MOVINGディレクター、アーティスト) イベント撮影:井上嘉和

1. 風営法の成り立ちと、Let's DANCEの請願事項

(磯部)
本日コーディネーターを務めさせていただく、ライターの磯部涼と申します。僕は今東京を拠点に活動しています。今年8月に河出書房新社からクラブミュージックと風営法に関する本を出版するために、各所に取材を行っているということもあって、本日壇上に上がることとなりました。本は編著という形でして、斉藤弁護士にも執筆をお願いしています。皆さん関西の方が多いと思うのですが、取材したり、友人と話をする中で、関西と東京のクラブミュージック好きの人たちの、この問題に対する意識の持ちように、すごい温度差を感じています。もちろん東京でも意識が高い人はいるのですが、東京では多くの場合、署名に協力してもらうことの前段階として「風営法がなんなのか知ろう」とか「問題意識を持とう」というように、呼びかけるところから始めなければいけません。今日は改めて何が問題なのかということを一緒に考え、法律に対するリテラシーを上げるための第一歩となればと思っています。
始めに斉藤さんと中村さんに伺います。「今よりも風営法の規制を緩和して、どんな店でもライセンスが取れるよう求める」など、他にも色々な請願事項の案が考えられる中で、なぜ今回「風営法からダンス規制の項目を外す」ということを掲げて署名を集めているのでしょうか。

(中村)
弁護士の中村和雄と申します。僕はディスコ世代なので、ディスコには多少出入りしていたのですが、最近までクラブにはほとんど出入りしていませんでした。風営法の規制の実態を知ったのは、今年京都市長選に立候補したときに、クラブを利用させていただいたことがきっかけです(※1)。大阪に始まって、京都でもクラブがどんどん摘発されていて、踊れなくなっているという現状を知り「これはちょっとひどいんじゃないか」と思い、皆さんと色々なお話をしました。
確かに「営業時間の規制をもう少し緩くしてもらう」など、様々な方法は考えられます。しかし、なぜそもそも許可をとらなければ踊れないのでしょうか。中学校では柔道などと並んで、ダンスが必修科目になりました。こういった状況の中で、営業としてダンスをさせるだけで、許可を取らなければいけないこと自体どう考えてもおかしいと。ダンスを風営法の規制対象にしていること自体がそもそも間違っているんじゃないかと。そのような経緯から「風営法からダンス規制の項目を外す」ということを請願事項としました。

(磯部)
続いて「風営法という法律が何を目的に作られたもので、何を取り締まるものなのか」というところを斉藤さんにご説明いただきたいと思います。

(斉藤)
弁護士の斉藤貴弘と申します。東京で弁護士をしているのですが、縁あって2年ほど前より関西のクラブ関係者から相談を受けています。その中で「とても他人事ではない」と感じ、弁護士として一人の音楽好きとしてお手伝いしています。クラブの摘発が始まってから、「風営法上クラブ営業に許可が必要だ」ということを知った方も多いと思うのですが「風営法でなぜダンスが規制されているか」については、歴史を遡らなければ、理解し難いのではないでしょうか。
もともとこの法律は1948年という、今とは時代背景が全然違う古い時代にできました(※2)。風営法はダンスをさせる営業を風俗営業として規制しましたが、これは、敗戦直後の経済的な混乱の中で、外国から色々な文化が入ってきたことなどによって風俗が乱れがちだったこと、ダンスホールがキャバレーに似た形態で営業されることもあり、売春行為が多数発生していたことが理由だったと言われています。
深夜営業に関しては、1980年代に少年非行が増えて、若者が様々な犯罪に巻き込まれていったという背景があり、規制の対象になりました。

※1)NPO環境保護団体GAEA & メトロ大學 共同企画
『京都市長選 公開政策討論会~市長候補に一問一答!~』
http://www.metro.ne.jp/schedule/2012/01/10/index.html

※2)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO122.html


PIKA☆
PIKA☆

1983年大阪生まれ 2002年、脳みそすぽんぽん最強ロックバンド「あふりらんぽ」を結成。ドラムヴォーカル担当。2004年キューンソニーよりメジャーデビューのちインディーに戻り2010年解散。その後「ムーン♀ママ」をはじめ数々のユニット、セッションなど国内外問わず精力的にソロ活動中。震災を期に大阪からエネルギーを考える、都会祭りおこしプロジェクト「TAIYO33OSAKA」を発起。


磯部涼 ISOBE Ryo
磯部涼 ISOBE Ryo

音楽ライター。主に日本の音楽について執筆。著作に『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』(04年/太田出版)、『音楽が終わって、人生が始まる』(11年/アスペクト)等がある。現在、クラブと風営法の問題を始めとした、昨今の日本の規制強化の傾向についての編著を制作中(8月に河出書房新社から刊行予定)


中村和雄 NAKAMURA Kazuo
中村和雄 NAKAMURA Kazuo

弁護士。27年間、京都を中心に労働事件や行政事件などを担当。小学校時代は野球少年。本人の思いでは将来はプロ野球選手。母親の薦めで、ヤマハオルガン教室に通うが半年で脱落。以来、音楽にはコンプレックスあり。2008年、2012年の2回、京都市長選挙に挑戦したが及ばず。2012年の市長選挙にあたって、風営法改正を訴える。Let's DANCE署名呼びかけ人のひとり。

中村和雄公式サイト
http://neo-city.jp/


斉藤貴弘 SAITO Takahiro
斉藤貴弘 SAITO Takahiro

弁護士。第二東京弁護士会所属。一般民事、企業関係、刑事事件など総合的な弁護士業務を行うとともに、柔軟な著作権システムを提案するNPOクリエイティブ・コモンズ・ジャパンで音関係を担当するなど、風営法とクラブ問題の他、多方面で音やアートをめぐる法律問題にコミットする。


2. 風営法の目的とクラブの営業形態

(斉藤)
風営法の目的として「善良な風俗の保持」「清浄な風俗環境の保持」「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止」の3つがあります。前者2つは「ダンスはいかがわしい行為だから、自由にダンスをさせてしまっては風俗環境が悪くなってしまう」ということが歴史的背景にあります。「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止」は要約すると少年犯罪の防止ということになります。風営法は大きく分けてこの二つの目的に依っています。
今お話した通り、風営法はかなり古い法律です。現在のダンスを取り巻く状況と、この法律を照らし合わせた時、「本当にダンスを規制する必要があるのか」というところで、今様々な疑問が提示されています。
次に風営法が具体的にどのような内容になっているのか少しご紹介します。現在大きな問題となっていますが、風営法の許可をとると、クラブは営業を深夜12時、あるいは1時までに制限されてしまいます。なおかつ風営法の許可を取ることができる場所は限られていて、店舗の面積が66㎡以上ないと許可がおりません。許可が取れるお店は限られており、許可が取れたとしても、朝までの営業ができない。こういったことから、風営法は現在のクラブの営業形態から乖離してしまっていると言えます。

(磯部)
PIKA☆さんはこの問題はどのように知りましたか。また、アーティストとしてイベントに出演される立場、お客さんとしてクラブに遊びに行く立場から、この問題をどのように捉えていますか。

(PIKA☆)
こんばんは、PIKA☆です。今回のことを知ったのは京都のクラブがどんどん摘発にあって閉まっているという噂や、大阪のアメリカ村でライブに出演させてもらったことのある、いくつかのお店がつぶれているということを聞いたのがきっかけです。今年私が大好きでよしみのある、大阪のnoonさんが摘発を受けたということを契機に「どうにかしないといけない」と思い始めました。

(磯部)
さらに法律的な部分をお話していきたいと思います。例えば、普段クラブに足を運ばない人や、クラブに行ったことがない人は「夜中に営業する意味ってどこにあるの?」「なぜ朝まで踊りたいの?」という疑問を持つ人もいるかもしれません。それに対して法律的な観点から、個人的な思いからお答えいただけますか。

(斉藤)
クラブはオールナイトで営業することで成り立っていた業界です。正当な理由があれば規制してもいいと思いますが、そもそも規制する理由がないんじゃないかというのが法律の観点からの見解です。

(中村)
オールナイト上映をしている映画館はありますし、カラオケだって未成年でなければ歌いたい人は朝まで歌っても大丈夫です。だったら踊ることだけ1時までしかダメだというのはおかしいですよね。「明日は休みだから3時まで踊っていたい」と思っている人に対して、「一切ダメだ」と言うのは、個人の活動の自由を不当に制限しているとしか思えません。

(磯部)
深夜営業規制は、有名なディスコ殺人事件(※3)と呼ばれる事件によって法改正されたと聞きますね。

(斉藤)
もともと風営法ができた当初は時間の規制はなく、その後の改正で条例において時間制限がなされていました。1980年代に入って少年非行が増え、中には若者がかなり残酷な形で事件に巻き込まれてしまうという背景があり、主に少年保護という観点から風営法に時間制限が盛り込まれ、また取締りが強化されました。ただし、すべて一律に規制してしまうというのは明らかに行き過ぎだと思います。

(磯部)
尾崎豊の『ダンスホール』は、確かその事件を元に作られた曲だと聞いたことがあります。『ダンスホール』でのディスコは「虚無を埋めるために踊り場で目的もなく女の子が佇む」というような描かれ方をしています。歌の歌詞だけでなく、映画や小説の中でもクラブやディスコはずっとそういう描かれ方をしてきたように思います。

(PIKA☆)
私はクラブに来る人ってみんなシャイだと思っています(笑)。シャイな人がちょっとお酒を飲んでそこで出会った人に「何してる人ですか?」と話しかけるような、そういうコミュニケーションのとりかたをする場所でもあって。夜中に営業する意味ということでいえば、みんな忙しいから、遊ぶ時間が自然に夜になっちゃうというのはありますよね。

(斉藤)
クラブに来る人には美容師さんやファッション業界の人、レコード屋さんなど、夜遅くまで働いている人も多いと思います。そういう人たちが仕事終わりに遊びに行けるところといえば、夜間も営業しているところに限られてしまいます。クラブは出会いの場、交流の場、遊びの場として重要なんです。

※3)新宿ディスコ殺人事件(新宿歌舞伎町ディスコナンパ殺傷事件)は1982年女子中学生が殺傷された事件。犯人が検挙されないまま公訴時効となった。

斉藤貴弘
磯部涼

3. 法律の曖昧さとクラブに対するイメージ

(磯部)
次にダンスの定義について伺いたいと思います。法律でダンスとダンスでないものはどのように分けられているのでしょうか。

(斉藤)
法律には何も書かれていません。ダンスは多種多様ですが、風営法がイメージしているダンスは風俗を乱すダンスですから、過激なダンスというか…風俗を乱すダンスというのはちょっとイメージが湧かないですね(笑)。

(磯部)
今までの摘発事例を見ても、シチュエーションがバラバラですよね。法律自体が曖昧だから、警察の判断によって踊ったか踊っていないが恣意的に決められてしまっているという印象があります。そのあたりはいかがでしょうか。

(斉藤)
風営法は刑罰を伴う法律ですが、本来刑罰を科すためには、法律が明確でなければいけないということが大原則です。基準もよくわからないまま「ダンスをさせた」という理由でいきなり逮捕され、何日も拘留されて、刑罰を科せられてしまうことは許されないと思います。

(磯部)
President BPMという近田春夫さんのグループが、1987年にリリースした『Hoo! Ei! Ho!』という曲では、風営法が時代遅れの法律だということが歌われています。その曲の歌詞の中で「ドアだけ閉めときゃバレないさ!」「本気で守っちゃ損するバカだよ」というフレーズが出てくるんです。いいかどうかは別として、それは法律に対してアーティストやクラブ関係者側がとってきた1つの態度だと思うんです。もちろんクラブ側もなあなあでやってきたところはあります。しかし、これまで実際にここまで相次いで摘発されるということはありませんでした。なぜ近年になってこのような事態になっているのでしょうか。

(斉藤)
そこは誰しもがわからないところですよね。

(中村)
風営法の許可は受けていたけれど1時以降に営業していたクラブも、許可を受けずに営業していたクラブも摘発されています。ではドラッグを使っている人たちが出入りしていたのかと言えばそうではない。なぜこんなに過剰な規制が始まったのかは警察の人に聞かなければ分かりません。さきほど、風営法の許可を取るには店舗面積が66㎡以上必要という話がありましたが、皆さんが通っているクラブにそんなに面積がないところはたくさんありますよね。でも警察はそれを知っていて、捕まえようと思ったらいくらでも捕まえることはできたはずなのに、今まで何もしてこなかった。

(磯部)
いきなり今気付いたわけではないですからね(笑)。

(中村)
風営法が問題なのは、令状がなくても自由に店舗に入り、捜査することができるという点です。

(斉藤)
薬物を取り締まりたかったり暴力団との繋がりについて摘発したいのであれば、令状を発付するために嫌疑を具体的に調べなければいけない。本来それが大原則ですが、風営法があることによってそういった手順をすべて省略することができます。会計の帳簿をすべて出させることもできますし、この法律によって非常に広範な捜査を許してしまっています。

(磯部)
なぜこれだけ摘発し始めたのかということに対する、警察の回答もメディアによって言っていることがバラバラなんです。

(PIKA☆)
私たち側もちゃんとアンテナを立てないといけないし、されるがままではいけないと思います。今回のことで勉強しなければいけないと感じました。

(磯部)
まずそういう法律にどういった力があるのかということを勉強した方がいいですよね。
朝日新聞の取材に対して大阪府警保安課は“昨年に東京・渋谷のライヴハウスであった放火予備事件を受け、「大勢が集まる場所では大量殺人の危険があると考えたことも摘発強化の要因の一つ」”とも回答をしていました。

(PIKA☆)
全然クラブに行ったことがない人がその記事を見たら「クラブってそういう場所なのか」と思ってしまいますよね。違う、違う(笑)。ほとんどの人が「みんな毎日頑張っているんだから、夜ちょっとくらい遊ぼうよ」というようなノリで来ていますよ。

(中村)
僕が普段専門としているのは労働環境に関することなのですが、若い人たちの労働時間は年々延びていて、夜9時、10時まで働くのが普通になっています。その後、「少しクラブに遊びに行こう」というとき、「12時でおしまいと言われたらたまらないですよね。クラブには色々な職種の人たちが集まってきているのに、「クラブはやばいところで、あそこに行くと大麻が売買されている」とか「暴力団が経営を牛耳っている」とか、そういうイメージを広げられていますよね。もっと「大多数のクラブはちゃんとした場所なんだ」ということをクラブに通っている皆さんにも宣伝してほしい。

(PIKA☆)
オールナイトしたくなっているのは自然な流れで、仕事が忙しすぎたり、それによってストレスがたまったり、そういうことが根本にあるような気もします。

斉藤貴弘
中村和雄

4. 育った場所を“守る”ということ

(磯部)
実際、クラブでのドラッグの検挙数は数字で出ているのでしょうか。

(斉藤)
例えば警察に捕まって「どこから手に入れた」と聞かれたときにクラブと答える人が多いですが、あれは不特定多数の人が集まる場所を答えると足がつかないからという理由が大きいと思います。

(磯部)
あの回答はコピぺみたいなものですよね(笑)。こういったことの積み重ねで、クラブに行ったことのない人の妄想が膨らんでいる部分はあると思います。ただこのあたりは難しいところです。「自分たちの知らない人が何をしているかわからない」ということに対して過剰に不安を感じて、監視したくなるという欲望は僕たちの中にもありますから。だから単純に“警察=敵”という問題ではないと思うんです。もちろん風営法自体に制度としての不備もありますが、「市民同士が監視し合う」という問題も根底にあるのではないでしょうか。人によってイメージも様々ですが、PIKA☆さんにとって個人的にクラブはどんな場所ですか。

(PIKA☆)
私は高校の時に軽音部でバンドを始めたのですが、学校以外の場所で自分の音楽を奏でられる場所がクラブやライブハウスでした。高校卒業してすぐにクラブに遊びに行っていた頃は、「私見てよー!」(笑)という気持ちである種、狂乱的に踊りまくっていたと思います(笑)。踊っていると「私のDJの横で踊って」と声をかけられ、それがきっかけでステージに立つことになりました。その時すでにあふりらんぽというバンドを始めていたのですが、バンドより先に“あの踊っている子”と覚えられて(笑)。だから当時、私にとってクラブは踊りを練習できる場所であり、自由になる方法を学べる場所でもあったんです。演奏者になる前にライブを見る側としての楽しみ方も知る事ができました。学校の授業ではきけないような音楽が聞ける場所だったし、私は大学に行っていないので、クラブはある意味で大学のようなものでもあったのかもしれません。

(磯部)
クラブは自分自身を受け止めてくれる一つの社会だったわけですよね。

(PIKA☆)
むしろこっちに真実があると思っています。

(磯部)
その中で見つかる友情だったり、そこからしか生み出せない表現がある。実際に今街中でかかっているような音楽も、クラブカルチャーの影響なしには成り立たないものです。そういうものが生まれてくる場所が、今追いやられているような状況なんですよね。

(PIKA☆)
大半は、社会に矛盾を感じていたり馴染めない人たちが集まって、自然にダンスや音楽でつながっているんだと思います。

(磯部)
署名活動が始まっていますが、法改正まではどのような道のりなのになるのでしょうか。

(中村)
最終的には衆議院と参議院を通さなければいけません。そのためには国会議員や政治家の協力も必要です。早い段階で100,000筆署名を集めて、次の国会に向けてみんなで議論し、「どこの条件をどういうふうに変えよう」ということをまとめて国会に持っていきたいと考えています。これまであまり知らなかったのですが、弁護士の中でもフジロックに通っている人や、クラブに通っている人もたくさんいます。法律家の人たちが結集してくれるのではないかと期待しています。色々な人たちの意見を集めて、みんなで一致できるところで動いていきたいですよね。

(磯部)
僕は今34歳ですが、僕らの世代がそろそろ自分たちが育ってきた場所を守ることを考える時期だと思います。

(PIKA☆)
原発のこともそうですが、今“守る”ということがポイントになってきていると思います。 当たり前に何でも周りにあったから、守るという意識がずっとなかったように感じます。

(斉藤)
当たり前にあったとか、与えられてきたとか、そういう豊かな大前提があったように感じますが、実際は全然そんなことはありません。弁護士をやっていると日々感じますが、自分たちで大切なものを守らなければ、どんどん安易な方向に世の中が流れ、規制されてしまう。自分たちで動かないと、自分たちの場所はどんどん奪われていってしまいます。

PIKA☆
中村和雄

5. クラブカルチャーの“新しい段階”へ

(磯部)
冒頭でも言いましたが、関西でクラブに関わっている人たちは非常に意識が高いですし、この問題に対して自分なりの意見を持っている人が多いと思います。東京などでも、twitterをやっている人は意識が高い印象がありますが、全国的に見ると対岸の火事のように見ている傾向がある気がします。しかし、もちろん風営法に関しては他の都市も同じ問題を抱えています。関西以外の人にもこの問題に気付いてもらい、より全国的な展開にしていくためにはどのようなことをしたらいいのでしょうか。

(斉藤)
恐らく関西で何が起こっているかを知っている東京の人が少ないのではないでしょうか。2年ほど前から徐々に関西で摘発が始まったことよって、多くのクラブは営業体制を見直して法律の範囲内でやっていこうと頑張っていた。にも関わらず摘発は止まらず、閉店に追いやられるお店も出てきた。そういう生々しい出来事を、東京の人たちに伝えるということが第一歩ではないでしょうか。

(中村)
クラブがカルチャーの大本で、最先端の場所だということを、みんなに分かってもらう必要があると思います。色々なミュージシャンがクラブから出てきて、最終的には世界に向けて発信しているんだ、ということを理解してもらうために、今活躍している人たちに呼びかけ人、賛同人になってもらってアピールしてもらいたいです。
3.11以降「今までのように政治を任せてちゃいけない」「自分たちで考えて行動しよう」という雰囲気ができてきたと思うんです。おかしいことはおかしいと言って、意見表明したら法律も変えていけるんだ、と。そういう成果を残すことができれば、若い人たちが自分で考えて行動するための大きな弾みになると思います。そういった意味でもこの運動を成功させたいですね。

(磯部)
法に対するリテラシーを上げることは重要だと思います。「違法なものが悪い」という論調が年々強くなっていて、「その法律が現状に照らし合わせて妥当なのか、改正する必要がないのか」というところになかなか議論がいかない。今回もクラブのことをあまり知らない人の中には「だって違法営業だったんでしょ」とか「法律は守らなきゃ」というところで考えがストップしてしまっているという人が多いという印象を受けます。クラブ側が自主的に努力する点があるのかということも話してみましょうか。

(中村)
やはり、大事なのはイメージを変えることですよ。実態はよくわからないけれど暴力団関係者が牛耳っていたり、薬物が取引されているようなところが一部にはあるかもしれません。今回運動をしていくにあたって、そういうところと一切関わらないことを徹底していただきたい。また、警察の方たちはクラブに対して騒音やごみの問題をよく指摘するので、署名運動と合わせて、「店の外に出たら静かにする」「ゴミは持ち帰る」といったことをもっと徹底していけるといいですね。そうして社会や地域から「クラブってすごいね」と思ってもらえることが理想です。

(磯部)
文化の黎明期には、そこにいるひとたちはあまり何も考えていない。それはそれで美しい時期ですし、常識に捕らわれないからこそ出来ることもあると思うんです。でも社会との接点があるわけだから、それだけではずっとは続けていけない。クラブが新しい段階に入っているのは間違いないです。

(PIKA☆)
いい意味で「始まった」という気がしています。法律などの社会的なものに触れると「真面目で格好悪い」「私たちの領域じゃない」と思うような、ある意味“間違ったパンク”のような観念を持ってしまっていた人が、自分も含め音楽関係者の中には多かったんじゃないでしょうか(笑)。実際に社会を遠いものとして意識していましたし。でも本当のパンクは、“社会の問題に「なんで!?」と言えるパワー”であって、今回そういうことが掘り出された感じがします。今回この会場にもクラブユーザーとして、弁護士さんや記者さんが集まっています。自然に集まった色々なジャンルの人たちの力が結集して、実際に社会を動かす力になるといことは本当にすごいことですね。感動しています。

(磯部)
この問題が生まれたから、こういう場ができたわけですし、肯定的にとらえて前に進んでいくしかないですよね。


中本真生 Nakamoto Masaki
中本真生 Nakamoto Masaki

1983年生まれ。愛媛県新居浜市出身、京都在住。京都嵯峨芸術大学造形学科油画専攻修了。&ART編集長。映像芸術祭“MOVING 2012”ディレクター。京都のデザイン会社、株式会社フィールドにプランナー/デザイナーとして所属。アーティストとして"なかもと真生"名義で活動するなど精力的に活動を展開している。

Photo by OMOTE Nobutada

&ART
http://www.andart.jp/

株式会社フィールド
http://www.fieldcorp.jp/

MOVING公式WEBサイト
http://www.moving-kyoto.jp/


≪Let’s DANCE署名推進委員会について≫

「ダンス」が法律で規制されているってご存じですか?

現在の日本では、営業目的で「ダンス」をさせることが、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)という法律で規制されています。ダンスが許可制になり、さまざまな条件が設けられています。同法は、「風俗営業」を対象に、「善良の風俗と清浄な風俗環境を保持」することを目的にしています。
しかし、ダンスをすることが、風俗や環境を乱すというのでしょうか。

「ロック・ヒップホップダンス」も中学校の必修科目

文部科学省は、平成24 年度よりダンスを中学校体育の必修科目としました。
その指導にあたっても「ダンスとは、古今東西老若男女が楽しむ身体活動」と位置付けて「表現や踊りでの交流を通して仲間とのコミュニケーションを豊かにする」(新学習指導要領) としています。授業では、「ロックやヒップホップなどのリズムの曲を組み合わせ」「つい踊りだしたくなるような状況を作りましょう」と指導計画を示しています。
クラブシーンを中心とするダンスカルチャーは、世界的にも市民権を得ており、オリンピックの開会式でもディスクジョッキー(DJ) が登場しています。同時にクラブ、ライブハウスは、そこで営業する人をはじめ、多くの雇用や消費を生み出す経済活動の場でもあります。ドイツ・ベルリンのように国や市で、政策の一環としてクラブの活性化をはかり、都市の魅力や成長の一助としている都市もあります。

憲法が保障する、表現の自由、芸術・文化を守ってください

現在の風営法( 旧・風俗営業取締法) は、「売買春」を防止する目的で、終戦直後の1948 年に制定されたものです。
学校でダンスが教えられる一方、未だに法律で踊ることを規制するのは、時代にマッチしないのではないでしょうか。多くのクラブ、ライブハウスは健全に音楽、踊りを通じて人と人が人間的にふれあう交流の場であり、青少年の健全な育成に向けて、薬物や暴力の排除・根絶、地域住民との融和にとりくんでいます。音楽家、アーティストを輩出し、新しい文化を生み出す場としてのクラブ、ライブハウスなどを守り発展させるために、次の事項を請願いたします。

請願事項

1. 風営法の規制対象から「ダンス」を削除してください。

2. 行政上の指導は、「国民の基本的人権を不当に侵害しないよう」に努め、「いやしくも職権の乱用や正当に営業している者に無用の負担をかけることのないよう」とする「第101国会付帯決議」(衆院1984年7月5日)や「解釈運用基準」(2008年7月10日)にもとづき適正に運用してください。

3. 表現の自由、芸術・文化を守り、健全な文化発信の施策を拡充してください。

呼びかけ人

坂本龍一(音楽家)
大友良英(音楽家)
いとうせいこう(作家 クリエイター)
日高正博(フジロックフェスティバル主宰 SMASH代表)
清水直樹(サマーソニック主宰 クリエイティブマンプロ代表)
マシーン原田(ADHIP代表)
今村克彦(創作ダンス 集団主催)
諏訪敦彦(映画監督 東京造形大学学長)
中村和雄(弁護士)


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Let’s DANCE ダンス規制法を考えるつどい

Category: Feature





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